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「うん…もちろん、喜んで」
「言って?」
そんな事を言いながら微笑む朱里に、倒れそうなほど頭が麻痺する感覚がした。
「アカリ」
「うん」
口に出すと一気に口の中が甘くなり、舞良は唇を噛んで舐めた。
響と呼ぶのとは違い、かなり恥ずかしい。
朱里ははにかんで、ケーキをまた一口大に切った。
しかしそれを口に運ぶ事はなく、もう一度横に座る舞良を見上げた。
「私も名前で呼んでいい?」
「…いいよ…でも」
朱里はまだ舞良の名前を知らない。
「待ってね、私、本当はあなたが誰なのかわかったかもしれないの」
「えっ…そうなのっ?」
「でも今日会って自信がなくなったよ、違ったかもしれない」
「それでもいいよ、言ってみて」
朱里はにっこりと笑った。
「いやだ」
今日の朱里の言葉には混乱してばかりだが、これにばっかりは本当にお手上げだった。
どういう意味なのか、まるでわからない。
「でも…今日は俺の正体を知りたかったんじゃ…」
「それが理由で一緒に行きたかったとは、私は言ってないよ」
言ってないっけ?
では何故一緒に行きたいと思ってくれたのか、舞良には他にひとつも理由が浮かばなかった。
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CINDERELLA STORY