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1:Ending and...

 岩山の間から朝日が差し込む。その光の中に足を踏み入れたジョシュアは唐突に歩みを止め、光の差す方へ顔を向けた。その少し後ろを歩いていた運び屋も同じように足を止めると、不思議に思ってジョシュアを見つめた。何もかも終わり、二人はダニエルたちを探している途中だった。
「私がソルトを逃がしたことを、あいつに殺された人々は許してくれるだろうか」
 独りごちるような呟きではあったが、それが自身へ向けられた問いかけであると運び屋にはすぐに分かった。
「死んだ人間のことは分からない。だが、あんたが正しいと思ってやったことなら、理解してくれるさ」
「そうだろうか。私を、許してくれるか……」
 今度の呟きは運び屋へ向けられたものではなく、死者に問いかけるような、そんな響きがあった。そして、ジョシュアは囁くように誰かの名を呼んだ。返事はもちろん無く、ただ、朝の日が彼の瞳を光らせていた。

 ジョシュアが口にした名前に、運び屋は聞き覚えがあった。このザイオンを旅している間、フォローズ・チョークやクラウド、そしてダニエルから、決してジョシュアの前でその名を出さぬよう彼は釘を刺されていたのだった。断片的な噂から察するに、その名の主はジョシュアの恋人であり、先のニューカナーンでの戦いの際に命を落としたらしい。
 ジョシュアがホワイトレッグスへ向ける憎悪の原因の大半を彼女の死が占めていたと言っても過言ではないようだ。そのせいで、あのホワイトレッグスとの戦いへ向けての機運が高まりつつあった中でうかつに彼女のことを思い出させると、彼の憎悪の炎に薪をくべることとなり、恐らく今よりもっと酷い虐殺が引き起こされるであろうことを皆、特にダニエルは懸念していた。
 だが、それらは全て杞憂に終わった。ジョシュアは彼女のことを心に留めつつも、ソルト・アポン・ウーンズへ向けた銃の引き金を引くことはなかった。皆が思うよりもずっと彼は理性的だったのだ。

 と、その時の運び屋は思っていた。


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