「…パパとママになんていおー。」

昼休み、窓辺で溜息をつきながら数学の返却答案を見つめる****はそこに書いてある17点という点数に頭を掻き毟った。他教科も決して良い点数とはいえないがそれなりには取れたのに数学だけが平均を大幅に下回った最悪な数字。

「****ー、まだ落ち込んでるの?」
「ナミぃ……ママに殺されちゃうよ!」
「あはは…まあ確かに、レイラさん怖いから…」

でしょでしょ!とがくがく震える****に同情しつつ、まあ次頑張ればいいじゃん、と励ましてはみるが彼女のショック、いや恐怖ははかりきれないものがあるらしくぐったりと窓から腕を出して答案を見つめていた。

「ナミ、お願いします今日泊まりにきてえ!!友達がいたらママも怒らないとおもう!」
「はいはい、残念だけど今日はエースとデートなの。」
「しょんなああ………!」

目をハートにして惚気られ、ナミの裏切り者ばかばかばか!と叫んでいると、ふわっと強く風が吹き****の銀色の髪が揺れた。ああもうっと髪を耳にかけると、ひらひらと風に乗って宙に舞う答案用紙が視界に入る。

「わ、わたしの答案!!!」
「ちょ、****?!」

ぎゃー!と猛ダッシュで教室から出ていく親友を呆れた顔で見つめながら、ありゃあ色恋沙汰には程遠いわねと、ナミは窓から浮かぶ答案を苦笑いして見送った。

「答案、答案!私の答案!」

方角的に校庭に落ちた気がし上履きのまま、サッカーを終えて玄関に向かう男子達の中をかきわけ屈んで歩いていると、ぼすっと誰かにぶつかり尻餅をつく。

「いたっ…」
「…何してんだ。」
「何って、捜し物ですよ、てゆうかなんでそんなところに立ってるんですかあなたは、もぉ、ほら、手すりむいちゃった!」
「屈んでうろうろしにくるお前が悪いんだろ。」
「んまっ!こっちの事情も知らずに!………は。」

校庭のど真ん中、立ち上がってようやくぶつかった相手の顔を見ると直接話したことはないが有名も有名な人物だったことに****の顔からさーっと血の気がひいていく。トラファルガー・ロー、学校一の秀才でありイケメンであり、常に機嫌が悪い度No.1の****が人生において関わりたくないと思っていたその人。****は後退りしながら、あはははと渇き笑いでんじゃどーも、とくるりと背を向けるが「おい。」と声をかけられぴたりと止まる。

「な、なんでしょおか…」

引きつった笑顔で振り向くと、にやりと笑って見せられる17という数字が書かれた紙。

「ひ!」
「・・・・・****。探しモンはこれか?」
「ななななぜそれを!」
「降ってきたんだよ。」
「(最悪!)あははは、嫌ね、17点の答案なんか探してるわけないじゃないすか!全く誰だろほんと、笑っちゃうよね17点て!」
「ほー、お前のじゃないと。」
「あ、あたりまえじゃないそんな点数私がとるわけ「おーいユースタス屋、今面白いモン見つけ「私のですぅ!お願いやめて!」

涙目になりながらローの手から答案を奪い返そうと飛び掛かるがひょいと避けられ、****は顔面から砂の上に滑り込む。あんな点数誰かに知れたら恥曝しだああ神様助けてと真っ赤になって、秀才には凡人の頭など理解できないでしょうね、と恨めしげにローを睨み付けると、彼は何故か口元に弧を描いていた。

「返してよ。」
「やだね。」
「は?!そんなものあなたが持っててもなんのメリットもないでしょう!」

返しやがれこのイケメン!足長いんすよちくしょー!と、悪口になっていないただのひがみをいいだけ叫ぶと、ふいに柔らかい感触が唇に触れた。何が起きたかわからずに呆然としていると、ローの手が****の顎をきゅっと掴む。

「・・・・・****。身長160センチ、体重46キロ、Dカップ、好きな食べ物はあんこう鍋、趣味は寝ること、彼氏居ない歴=年齢。」
「…は?」
「今日、ようやく人生初の彼氏ができた。」
「はい?」

つらつらと自分のプロフィールをあてられて****は目を点にする。てゆうか彼氏ってなんだそんな気配微塵もないぞと、口を半開きにしているとその口に今度はゆっくりとローの唇が重なって、****はようやく、自分が彼にキスをされているのだと認識した。

「今日からお前は俺のモンだ。」

勝ち誇ったように笑うローにわけがわからず、腰が抜けたようにへなへなと座り込んだ****の後頭部にサッカーボールがぽーんとあたった。



(彼に心事奪われた。)



飛んでけ私の17点


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