南蘭
「…エロみ沢」
「…いきなりなんだよ」
南沢さんが転校してから、会う時間がだんだん減っていったから。
八つ当たりみたいなことをしてみた。
「霧野?」
「南沢さんのバカ」
「ったく、お前はなんなんだよ」
ふい、と南沢さんに背中を向けて座っていたら、強制的に南沢さんの方に向けられた。
「言ってみろよ、霧野」
「…最近ぜんぜん会ってくれなかったじゃないですか」
1週間くらいなら、我慢もできたけど。
1か月も我慢できるほど、俺は大人じゃない。
「……霧野、」
「…何ですか、南沢さ…」
唇に、慣れた感覚。
鼻がくっつきそうな距離にある南沢さんの顔。
ああ、キスされたんだ。
「…ん、」
短めのキスをして唇を離したあと、南沢さんに抱きしめられた。
「俺も寂しかったから…今日はたっぷり遊んでやる」
不敵な笑みを浮かべてそう言った南沢さんに、つい言葉を漏らした。
「…エロみ沢」
「…懲りないな、お前」(8/16)
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