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「――知ってるのか!?」
「やっぱり、そうなのね」
 こんな風に繋がってきたのは、ルカ自身も思いも寄らない事だった。件の話を一番初めに共有するのがゼキアになるとは。躊躇うこともなく、ルカは城の一室での出来事を話すことにした。本来ならあまり軽々しく話すものではないのだろうが、もはや彼も当事者だ。少しでも情報は共有した方がいい。あんなおぞましい存在が王の傍にいて、ろくな事など有るわけがないのだから。
 王と話していた男が同じ人物だろうということ、その会話からよからぬ事を企てているようであること、そして恐らくそれにルアスが巻き込まれたこと。それらを説明するうちに、ゼキアの表情が俄かに険しくなっていく。
「面倒な上に、規模のでかい話だな……とんでもないことに巻き込まれたもんだ」
「でもルアスを見捨てる気はないでしょ」
 確認するように問うと、ゼキアは俯き深い溜め息だけを返した。是、ということなのだろう。もちろん、彼が首を振るとは思っていなかったが。
 とはいえ、騎士団があてにならない以上は自力で活路を見出さなければならない。無論そうしようとしたからこそ彼はここにいるのだが、それは阻まれてしまった。学院とは無関係の一般人、それも貴族で言うところの卑しい身分の者をそう簡単に中には入れてくれないだろう――だが。
「……あのね、学院の中を調べるのは、私がなんとか出来るかもしれない」
 そう言った瞬間、ゼキアは弾かれたように顔を上げる。ただ、その眼差しは疑念の含まれたものだった。どうする気だ、と言いたいのだろう。そんな彼に向かって、ルカは悠然と微笑んだ。
「私を誰だと思ってるの? 騎士や臣下達を動かせるような権限は無いけど、私自身が中に入れて貰うくらいならなんとかなるわ」
 わざとらしいくらいに力を込めて、ルカは断言した。曲がりなりにも自分はエイリム王の実子だ。例え煙たがられる存在であったとしても、その事実は変わらない。権力とはこういう時に使うものだと、ルカは思っている。そう強く心に言い聞かせて、ゼキアの肩を叩いた。
「本気、か?」
「当然。まぁ、追い出された直後の人間も一緒にってなるとちょっと難しいかもしれないから、一人で行ってくるわね。貴方は少し休んだ方がいい気がするし」
 顔色の悪さを指摘すると、ゼキアは気まずそうに目を逸らした。やはり、疲れているのだろう。それでもなかなか頷こうとはしない。
「何か分かったら、必ず報せるから」
 少しでも安心させようと、重ねてそう言った。ゼキアは暫し逡巡する様子を見せたのの、やがてゼキアは一つ息を吐いた。
「……どっちにしたって、今日のところは退散するしかなさそうだ。手掛かりがあれば、頼む」
「まかせて。じゃあ、後でね!」
 ゼキアの言葉に、ルカは強く頷き返した。僅かでも寄せてくれた信頼を裏切ることは決してするまい。ルアスも、きっと助けてみせる。その誓いを胸に、ルカはゼキアを残して駆け出してた。去り際に小さく無理するなよ、と聞こえた気がして、口元は自然と綻んでいた。


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