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「そうだ、ねぇゼキア」
「……なんだよ」
 蚊帳の外かと思えば突然名を呼ばれ、ゼキアは渋々それに応えた。此方は関わりたくないのにやたらと話を振ってくるのが、一番厄介なところである。
「この前のルアスの力の話なんだけど、やっぱりよく解らなくて。もう一回説明してれない?」
「本人が散々説明してただろ」
「話が専門的過ぎるの! 殆んど貴方達だけで喋って終わっちゃったじゃない。残念だけど私、魔法の才能なしって断言されてるの。だから、もう少し魔法に明るくない人間にも解るように話してよね」
 すげない返事も余計にルカが食い付いてくる結果となり、適当にあしらおうというゼキアの意図は失敗に終わった。件の出来事からはもう半月近く経っている。何故今更そんなことを訊いてくるのか。とにかく自分を喋らせようという、嫌がらせのような意思しか感じられない。
「要は、ルアスの封力(ふうりょく)が異常なほど高いってことだろ」
「だから、その魔力だの封力だのっていうのがまず解らないんだってば」
 あくまで受け流そうとするゼキアだったが、そうはさせまいという視線が痛いほど突き刺さる。どうあっても、ルカは自分を放っておいてはくれないらしい。
「……魔法は、魔力の他に封力があって初めて形ができるもんなんだよ」
 仕方なしに、ゼキアは魔法の理論を説明することにした。恐らく、さっさと説明して納得させてしまう方が早い。
「魔力は魔法の力そのもので、普段は身体の奥底で眠ってる。封力はそれを道筋つけて外に引っ張り出して、魔法として制御するための力だ。魔力があっても、封力がなければ魔法として力を使えない。ここまでは理解したか?」
 魔法を使う者には、基礎中の基礎の内容である。しかし普段全く縁の無いという人間に話すとなると、中々に面倒臭い。出来るだけ噛み砕いて話しているつもりだが、一通り説明を聞いたルカはあやふやに微笑んだ。
「えーと、解ったような解らないような?」
「……解ってねぇんだろ」
 やはりと言うべきか、とても理解したとは思えない返答である。少しばかりの苛立ちを腹の底に押し込め、どう説明すべきかを模索する。
「……そうだな。魔力が泉の水なら、封力はそれを汲むための桶だと思えばいい。いくら水があっても、汲むための道具がなかったらろくに使えないだろ」
「ああ、うん。それなら想像できるかも」
 次の言葉には、ルカも得心がいったように声を上げた。そして、いつの間にか肩を並べたルアスまでその横で同じような反応をしている。何故彼まで納得しているのか腑に落ちないながらも、ゼキアは説明を終わらせることを優先することにした。
「で、ルアスの場合は水は少ないが使うための能力は高い。自分の泉に水が無くても、他の泉……つまりはお前の魔力を引っ張ってきて魔法を使ったってことだ。以上!」
 話を締め括りと共に、同時進行していた荷物の整理も終了する。袋の底に残っていた林檎をテーブルに取り出して息を吐くと、何故か二人から拍手が沸き起こる。
「なるほど、なんとなく解った気がするわ」
「解りやすかったねぇ」
 うんうんと頷き合う二人の様子に、意図せずとも全身の力が抜けていくのが解った。この二人、妙に結託してゼキアを振り回してくれる傾向がある。お陰様で最近はやり込められてばかりである。


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