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「……というか、なんでお前まで納得してるんだよ。当事者だろ」
「うーん、そうなんだけど……感覚的にやってるから上手く説明できないんだよね」
 のほほんとそんな発言をするルアスに、ゼキアは溜め息を吐くしか出来なかった。返事代わりにその頭を軽くはたくと抗議の声が上がったが、それは黙殺する。ルアスの文句を聞き流しながら、ゼキアは話の発端となった出来事を思い返した。
 ――本当はね、あまり人に言っちゃ駄目っていわれてるんだ。
 そんな前置きから語られたルアスの能力は、驚愕に値するものだった。碌な魔力も持たない、落ちこぼれの魔法師。それが彼が名乗っていた自らの素性であり、ゼキアが疑問を抱くだけの要素も無かった。実際、何度か目にしたルアスの魔法は、治癒系を除けば弱々しいものばかりである。とても“影”に応戦できるほどのものではない。だというのにルアスはあの時、自分も苦戦した影の獣をあっさりと退けて見せた。どういうことだと問い詰めれば、少年は困ったように首を傾げ答えたのである、自分には無いがルカには有るから、それを借りたのだ、と。
 持っている魔力と封力が比例しないのは、別段珍しい話ではない。それこそルカがいい例である。恐らく、彼女は魔力だけならかなりのものだろう。その髪と瞳の色彩が、強い水の加護を物語っている。それでも魔法の才なしと言われたのなら、封力を持たないゆえに魔法を行使出来ないのだろう。そして、ルアスはその逆である。
 ――だが、彼の封力の高さは異常と言っていい程のものだった。ルアスは『光の愛息子』だ。全ての属性の魔力を持つ彼らの封力は、元来高いものらしい。だとしても、他人の魔力に干渉できるなど前代未聞である。人に言い触らさないのは正解だ。これだけの逸材で、しかも見目も良いとなれば利用価値はいくらでもある。そしてこの国には、それを私利私欲に使おうとする人間がごまんといるのだ。ルアス自身は抵抗するための力が乏しいことを考慮すれば、賢明な判断である。
 そしてもうひとつ疑問なのが、そんな芸当が出来るというのに何故マーシェル学院を退学になったかということである。魔力が低いにしても、これならいくらでも道はあったはずだ。そもそも学院がこんな貴重な人材を手放すとも思えない。思えば、最初から奇妙な話ではあったのだ。ルアスの話によれば、彼が王都に来たのはせいぜい三つか四つの頃らしい。学院で学ぶのに年齢制限は無いが、いくらなんでも幼すぎる。ルアス自身の記憶も曖昧な上、考えるほどに不自然な点が目につくのだ。今更嘘を吐かれているとは思いたくないが――いったい、彼は何者なのだろうか。
「ゼキア? どうかした?」
 沈黙するゼキアを不思議に思ったのか、ルアスが顔を覗きこんだ。未だ幼さの残る金の瞳には、邪気の欠片も感じられない。
「いいや。なんでこんな芸当が出来るのに学院を追い出されたのかと思ってな」
「理由なんて僕が知りたいよ。突然友達から聞かされて、そのまま追い出されたんだよ?」
 疑問の一部をぶつけてみても、ルアスは眉を八の字にするばかりである。勘繰りすぎ、なのかもしれない。少なくとも、ルアスが悪意を持ってゼキアと共にいるようには見えなかった。


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