天弥見聞録 | ナノ


【Z妄想】待機拗らせてEDアニメらしき夢を見た。

Twitterの方で某方にシューティングしたSS。
ただ会話だけ書いてもつまらんので地の文盛りましたスミマセン。こういう感じだったらイイナー程度に。現時点で出てるメンバーしか居ないし。





 後一歩踏み出せば、スレイは消えてしまう。災厄を鎮めるために、“導師スレイ”として最後の役割を果たしに行ってしまう。
 溢れる光の寸前で立ち止まり振り返ったスレイに、なんと言葉をかけようか。それがすぐに思い浮かばず、アリーシャは彼が他の仲間と言葉を交わしているのを、ただ傍観することしか出来ない。
「……っ」
 会話をするのは、これが“最後”になってしまうかもしれないというのに――それを否定する感情が、言葉を詰まらせる。別れの言葉も、励ます言葉も、今は発せない。
 胸の前でぎゅっと手を握るアリーシャ。そんな彼女に、スレイが声をかける。
 いつもと何も変わらない、優しい声色で。
「アリーシャ」
「…………スレイ」
 スレイの表情は穏やかだった。これから何が待ち受けているか分からないのに、それを恐れている様子はまったくない。
 ああそうだ、この真っ直ぐで優しい瞳が好きだったのだと、アリーシャは視線を合わせて思う。導師として世界の未来を見据え、人々のために各地を駆けるその姿は、いつだってあたたかな光のようだった。
「帰って、来て」
 自然と零れ落ちた言葉。絞り出そうとしていたものや並んでいた候補はすべて消え、抱いた想いがすべてその一言に集約される。
 アリーシャの言葉に、スレイは笑った。まるで、分かっていたかのように。
「約束したじゃないか! オレは帰って来るよ」
 アリーシャの前に立つと、スレイは耳に下げていた羽根飾りの片方を外して彼女に手渡す。
「だから……待っててほしいんだ」
 頷くアリーシャ。スレイの瞳に映った彼女は、浮かびかけた涙を拭い笑った。
 淡い光が、踵を返したスレイを包む。光の粒子に交じって消えていく姿。思わずエドナが傘を握り締め、俯いた。ミクリオはそんな彼女の肩にそっと手を置く。そして、信じてる――そう告げる代わりに、スレイに向かって頷いた。
「行ってくる!」
 一瞬強くなる光。それが消えた時にはもう、スレイの姿はなかった。
 祈るように、ライラが目を閉じ手を組む。デゼルは相変わらず表情が見えないが、スレイをしっかりと見送っていた事に間違いはない。
 アリーシャが、ゆっくりとスレイが居たところに歩み寄る。
 宙を漂っている光は、次第に消えていった。


―――――――――――――――――――――


 あれから何度、暦を捲った事だろう。
 何度季節が巡り、何度“彼”の事を想っただろう。
「もう三年、か」
 消えていったスレイの後ろ姿は、未だにアリーシャの脳裏に焼き付いて離れない。
 城のテラスから見る、穢れのない故郷。願ってやまなかった景色。スレイが救った世界はこんなにも美しく、こうしている今も、どこかで良い方向に発展し続けている。
 これからも、世界は作られる。彼の望んだ世界へ――そしてその先へと、確かな歩みを進めている。
「……君にも見て欲しいよ。スレイ」
 翼の装飾が付いた首飾りをそっと握り、アリーシャは空を見上げた。
 もしここにスレイが居たら、あの時のように、新しい世界に対して好奇心に目を輝かせるだろうか。それともまた、古代の浪漫を追いかけて忙しなく世界を駆け回るだろうか。
 何気なく視線を下げれば、騎士団が訓練をしているのが目に入った。あそこに居た日々がとても懐かしく思えて、アリーシャは思わず笑う。
 その時だった。
「ア、アリーシャ様!」
「……え?」
 一際声の大きい兵士が叫ぶと同時に、アリーシャの上に巨大な影が現れた。強い風が吹く。それに混じって聞こえた咆哮は、恐れるようなものではない。
 突風に近いそれから顔面を覆っていた腕を下ろす。顔を上げるアリーシャ。その視線の先、晴れ渡る青空を、蒼いドラゴンが飛んでいた。
「!」
 その背に乗っていた人影が、やや高い事も気にせずにひらりと身を翻す。彼はアリーシャが居るテラスに着地すると、振り返って彼女の名を呼んだ。
「アリーシャ」
 三年前と、何も変わっていない。その優しい声色も、あたたかい光を宿したその瞳も、何一つ。
 視線を合わせたものの言葉が出ないアリーシャへ一歩近寄って、彼は――“スレイ”は、笑って言う。
「ただいま」
 それは、アリーシャがずっと聞きたかった言葉だった。
「……おかえり。おかえり、スレイ……!」
 帰ってくるって、信じてた。
 駆け寄ってきたアリーシャを、スレイはそっと受け止めた。






ゲーム発売日さえ決まってないのにこれ。すみませんでした!(しかし反省はしていない)
前のにほんの数行加筆。


2014/06/30 14:44

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