天弥見聞録 | ナノ


アドル・クリスティンという海溝に落ちた話。

※21:50 誤字訂正
※翌日 追記
※\核心ネタバレあり



あの頃に出会っていたら、アドルに対する見方が違っていたかもしれない。


2019年予想外オブザイヤーを開催したら間違いなく1位になるであろう、アドル海溝への転落及び沈没。こんな予定はなかったんだ……いやでも(自分は)推しが生まれる時ってだいたい突然だよなあ、すべて知った上で背を押されゲームに突撃して、予定通り沈没して底に着いた今も掘り進めているクロウ・アームブラストが特殊すぎたのでは? と思う事にしてる。
Twitterで何度か書いてたけど、私の初イースは[のVITA版なので歴はかなり浅い。イースシリーズの存在自体は10年以上前から知っていたものの、軌跡同様なかなか手を出さずにいたという、今の自分からすればかなり謎な状態。ファルコムの音楽がツボだというのも分かっていたのに……どうして……という、今更どうしようもないものは置いておく。


遡る事2016年7月、私はイースシリーズの扉を開くべく、[のVITA版をプレイ開始した。そもそも何故[をやろうと思ったのかと振り返ると、閃で初めてファルコム作品に触れたところ、音楽が予想通りめちゃくちゃ好みで「イースも音楽良いって聞くしやってみたい!」となったのがきっかけ……だった気がする。あとキービジュアル(VITA版のパケ絵)が綺麗で、ダーナの外見が好みストライクだったのもある。
ARPGと聞いてアクション下手なのでクリア出来るか若干の不安はあったものの、難易度選択があって一安心。無事に真エンドまで行けた。

「アドルはよく漂流する」という知識はあったので、冒頭で船に乗っていて(ああこれ沈むんだな……)と、おセンチになりながらも話を進める。アドルの黒い瞳が澄んでて綺麗だな、と思った。
その後お約束(?)のごとく魔物に船が襲われ、応戦するもアドルは海に投げ出されてそのまま漂流、セイレン島に漂着するわけだけど、ここでまず心を掴まれたのが『SUNSHINE COASTLINE』。

えっ、何この解放感ある明るい曲? 無人島に漂着したんだよね? さあ冒険だ! って雰囲気の曲では……?

と、良い意味で戸惑いながら探索を開始した記憶。アドルの尽きる事のないキラキラとした好奇心がそのまんま曲に反映されて、セイレン島のあの太陽が眩しい海岸と合わさったかのようなその曲にまず落とされたのもよく覚えている。
戦闘中除いて基本喋らないし、選択肢から性格を察するしかないけど、梶さんの穏やかな声もあってめちゃくちゃお人好しで心優しい事は分かって「よくいる主人公型だけど、ボスが出てくると落ち着いて剣引き抜くの、30年以上主人公やってる貫禄を感じる。カッコかわいくて好きだな」というところに着地。服に付いてる謎の青いひらひらかわいいなと感じたし、ラスボス戦前に選択肢の台詞をボイス付きで言った時はカッコいいな……と思った。思えばこの時、既に海溝を覗き込んでいたのかもしれない。
過去作をやろう、と[の後に思ったりはしたものの、[〜\の間は閃の軌跡の行く先が気になりすぎて他の作品に身が入らないレベルだったので、本当に何も出来ていない。PS4版は買いました。

そして迎えた2019年。イース\、海溝落ちのきっかけ。
色々と忙しなく事前情報をあまり追っていなかったのもあり、\のアドルに関しては「何故か黒髪」「赤マフラーかわいいし口元隠しあざといぞクリスティン」「赤の王カッコいい」「しっぽ髪マジ正義」くらいの認識しかなく、だからこそ反動が大きかったのかなと今は思う。見ているか数か月前の私。

\を始めても、しばらくは事前に思っていたままの感情を持って進めていて、謎に満ちたシナリオにヒヤヒヤしながらも目の前にあるものを海溝と認識出来ず、辿り着いた最終幕冒頭。

ここで足場が消えた。静かに海溝落ちした瞬間。

二人のアドル、交わした約束、自分との対話、梶さんボイスMAXな赤の王の台詞と表情、「一緒に連れて行ってくれないか」、それに対して何の迷いもなくすぐに赤の王の手を取る『アドル』。

『好き』がこんなに詰まってるイベント、ある?

感情大渋滞、語彙爆発四散、とはこのことかと(この少し後にも同じ事が起こるとはこの時は知らず……)。このイベントを見てから数時間、ずっとその状態。
ただ、赤の王の事を思うとしんどさもあるにはあるけれども、今までの落ち方とは何かが違った。そのイベントでアドルと赤の王が交わした『会話』が、自分のツボに綺麗にハマったのだと思う。
アドル(のホムンクルス)として生きるも、不安定な体で怪人化を行ったりしたが故に、命の残り時間が尽きようとしている『赤の王』。けど、そこはアドル。自分の消滅が目前に迫っていても諦めず、これからも続く冒険に行きたい想いを『アドル』に伝えて、連れて行ってくれないか、と手を伸ばす。アドルは何の躊躇いもなく、もう一人の自分を連れて、冒険を続ける事を選択する。辛いけど希望の光に包まれたイベント。当たり前だけど二人とも真っ直ぐすぎる。刺さりすぎて未だに抜けないし、当分継続する。

\の「過去に囚われるべきじゃない。けれど、それは置き去りにして忘れてしまうわけではない」という部分も好きポイントなので、EDの辺りもとにかく好みだった。[は分かるので魂魄のダーナに涙腺刺激され、スタッフロール最後の壁画で『名前の残らない英雄』になったのだと感じさせられた彼らがあまりにも好きすぎて、完全に想定外の落ち方をしてしまった。

10月13日、そんな\をクリアしてからプレイ感想を纏めていてふと思う。

「アドルの今までの冒険を追いたい」
「\の彼を形成するに至ったものを自分の目で見たい」

元々興味があったシリーズだったしゆるく追っていく気ではいたものの、\で完全に火がついてしまった。今旅立たないでどうするんだ! 行くぞ! と、自分の中で冒険心のようなものが燃え上がったと言っても過言ではない。まず第一歩としてセルセタをポチる。もう冒険心呼び覚まされてます。
そして約1週間後の10月21日、仕事が落ち着き、休憩時間がいつもより長く確保出来たので秋葉原へ。居ても立っても居られなかった。とりあえず買おう、買ってしまおう! という思いだけがあった。
ただ、何店舗か立ち寄ったものの、見付けられたのはSEVENのみ。あったら買おうと思っていたT&Uクロニクルズとフェルガナがどこにもなく、会社に戻る電車の中でその2本をポチる。
(ケフィンはハード未所持、ナピシュテムのPSP版は処理速度や操作性に難ありと聞いたので一旦保留に。そのうちやれるといいな……)

数日後、届いたそれらと今家にあるイースを並べたら今までに感じた事のないような感情が沸き上がってきた。

「推し認定したいキャラが主人公のゲームがあと4本もある」

何この現実? こんな事ある? あるんだよ、とセルフツッコミをしたくなるような状況。ここまで同じ主人公が続くシリーズある……? いや某キノコで強くなる配管工とか、ピンクのぽよぽよしている星の戦士のゲームとか、あるにはあるけども。
供給量がすごい。しかも作品毎に(同じ場合もあるけど)年齢が違う。推し認定したいキャラをこんなに細かく追える。加えてアドル、63歳くらいまで死なないという保証付き。
同時に、イースシリーズはアドルの残した手記をもとにゲームにしている、という設定が面白いなあと感じた。所謂メタフィクション的な作品に触れるのが久々なので、時折、アドル・クリスティンという冒険家は実在したのではないか、と思いそうになる。教科書捲ったら彼、載ってませんかね? とか考えてしまう。

そんなイースシリーズが積み上げた歴史は本当に長い。最初の作品が出た時に自分は生まれていないのだと思うと、そんなに前からアドルは主人公やってて冒険してるんだな……と、しみじみとした気持ちになる。

この怪文書の最初に「あの頃に出会っていたら、アドルに対する見方が違っていたかもしれない」と書いた中のあの頃というのは、ゲームというものにハマった小学生〜中学生辺りの事。RPGというものを通して「物語」を体験・見る楽しさを覚えて、今もそれは続いているけど、色々と捉え方は変わってきているなと自分でも思ってる。大人になって物事を深く考えられるようになった、と言ってしまえばそれまでだけど。※当社比
Twitterや\感想記事でも触れたけど、アドルが推し認定したいキャラに入ったのはなんとなく共感出来る部分がある、というのもある。さすがにアドルほどではないけれど、自分も好奇心の赴くままに遠出を決めて一人であちこち出かけたりするし、見知らぬ土地を歩く楽しさはよく分かるので、友だちに居たら楽しそうだなぁという感情が沸き上がった。
あの頃はドラクエにハマっていたので、その時にイースをプレイしていたら多分、その作品に出てくる勇者を見るような視点で、アドルの軌跡を追っていたかもしれない。つまり、友だちに欲しい感じ、とはおそらく思わなかった。
アドルのこれまでの活躍や、辿った旅路を見ると運命に選ばれていたりヒロイックな印象はあるものの、あくまで彼の肩書は勇者や選ばれし者ではなく『冒険家』。そこがイイ、と、素直に思う。まだセルセタが途中だけども、冒険家を名乗るきっかけはこの作品らしいのでクリアするのが楽しみ。(エルドゥークで仮面着けて神殿の扉オープンするところ、ちょっと笑ってしまって申し訳ない)

アドル海溝を認識したきっかけはもう1つ。
\は『アドル・クリスティンの再定義の物語』なのではないか、と見かけた。同じような感想を抱いていたので、ものすごく納得がいく考察だった。
作中で彼に向けられた「どうして冒険をするのか?」という問いかけは、画面を通じて自分にも突き刺さった(私は冒険をするわけではないけど)。
というのも、最近、仕事をする中で「どうして◯◯をするのか?」という問いかけに再度直面し、仕事に伴うある行動を見つめ直して、その答えを考えていたところだったから。そのまま、自分の中で燃えているものは何か? という自問に繋がり答えに辿り着く事が出来た。
ある意味冒険をしてきた人生だったのと、\のアドルとはほぼ同い年(1歳差)であるのもあってかその過程で妙に親近感に似たものが浮かび、今に至る。
振り返るとゲームに人生の道を示され過ぎだと我ながら思うけど、そういったものに現実と架空の境界線は存在しないのではないか、とも思った。


……と、長々と書いたけど、要するにアドル・クリスティンもかなりツボなキャラでした。という事で。

引き続きイースシリーズ楽しみます。海溝潜水を続けるけど、生暖かく見守ってください。


【追記】
電撃PSの社長インタビュー。まるで最終回のようだという一文に笑ってしまったけど、\をアドルの再定義の物語として見るならば、妥当なラスボスなのかな。

そしてあのイベントの表情などから察してはいたけれど、マリウスと戦う事を、アドルはやはり最後の最後まで迷っていた。
プレイした作品が少ない自分でも分かるほど、アドルは心優しいひとだ。だからこそ、マリウスは立ち合いを頼んだし、あの願いを託せた。あそこは一言も台詞がないからこそ、二人の表情に集中して見ていたので、ファルコムが籠めたものを受け取りやすかったな、という印象。
そのマリウスはオリジナルの年齢不明、という状態だけど、そこまで大きく年齢は離れていない気もする。ただ、アドルより年上。ここ推しポイントなので蛍光ペンを引きます。

オリジナルのマリウスに伝えると約束した、アドルの冒険の答え。それが出るのはいつなのか、今はまだ分からない。
1つ決めたのは、その時まで(勿論その後もだけど)アドルの冒険を追い続けよう、という事だった。人生に少なからず影響を与えてきた作品は、何が何でも追いたくなってしまう性分なのだから、もうどうしようもない。


推しに更に沈む時ってだいたいこうなんだよなぁ……と思いつつ、イースXを待ちながら、まだ見ぬ冒険を全力で駆け抜けようと思います。




2019/11/27 20:14

prev / next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -