レイラを抱き上げてベッドに下ろし、ネクタイを緩めながら頬に唇を寄せる。そのままほっそりとした頤に舌を這わせ、服を乱していく。レイラの指がもどかしげに俺のシャツのボタンに触れた。外そうとしているらしいが、うまくいかないようだ。その指を取り上げて、爪先にキスをする。そのまま舐めしゃぶり腕まで唇で上り、腕の付け根に吸いついた。くすぐったそうに、身を縮める。
 そのまま散々レイラのやわい肌を舌と指で蹂躙し、ようやく下肢の付け根に顔を寄せる。
「ジェイミー」
 かすかな恥じらいと拒否を兼ねて俺の名前を呼ぶのを無視して、蜜を吸う。レイラはもう何も知らない少女ではないのだ。この先にある快楽を知っているし、だからこそ恥じらう。
 丁寧に舐めて指を入れてほぐす。俺の指に甘えるように吸いつくレイラの内側は、六年間ですっかり俺に馴染んで、俺をよろこばせるすべを完全に掌握した。
「レイラ、愛しているよ」
 耳元で囁いて、そのまま耳殻を口に含み、貫いた。抱いた身体が震え、俺の腰を挟んだ脚がぎくりと引きつる。
 レイラをうまく誘導しているようで、どうやら手綱を握られているのは俺のほうじゃないか、そう思うくらいにお互いがお互いのいいところを知り尽くしている、そんな行為だった。
 彼女の奥を白く汚してから、荒い呼気を隠せずに頬を染めて目を閉じるレイラの瞼にくちづけて、呼吸をととのえる。それから、そっと引き抜いた。
「大丈夫?」
「……」
 声なく頷いたレイラが、そっと目を開く。
 その蕩けた瞳と視線が絡み、先ほども鳥籠で考えていたことが、さざ波のように引いては押し寄せた。
 レイラの街を見下ろすベビーブルーの瞳が、今俺だけを映している。そのことをちゃんと分かっていながらも、俺はもう決意するしかなかった。
「レイラ」
「何?」
「きみに、返さなくちゃいけないものがある」
「……え?」
 レイラを毛布でくるんで、立ち上がる。不思議そうに俺を見つめるベビーブルーの瞳から目を逸らし、クロゼットの扉を開き、埃がかぶらないよう大事に袋に入れて保管してあったそれを手に取って戻ると、彼女はきょとんとして俺の手元を見つめた。
「何、それ?」
「きみのものだ」
「……?」
 小さなウサギのぬいぐるみ。きちんと保管しておいたはずなのに硝子の目玉は古くなって少し曇り、毛並もぼさぼさでつやがない。首元に巻かれたリボンも少し汚れがついていて、ふつうの、何も知らない人間が見れば汚いぬいぐるみだと思うのだろうが、俺にとっては、この世でこれよりも価値のあるウサギのぬいぐるみなんかない。
 レイラは、俺から受け取ったそのぬいぐるみをじっと見つめて、チェックのリボンを指で撫でた。
「わたしの……?」
 レイラの目がすうと細くなって、昔の記憶をたぐり寄せようとせわしなく左右に動く。そんなものがあるはずがないのに。
「……思い出せない。わたしこんなウサギ知らないわ……」
 やがて、レイラは記憶の探索のさじを投げた。それも仕方ないことだ。これを俺にくれたのは、彼女自身ではないから。
「これは、誰のものなの?」
 レイラの瞳が、訝しげに歪められて、俺を見た。俺は、自身も記憶をたどりながら、ほんのわずかほほえんだ。
 いくら昔のことだと言い聞かせても、あの時の声や匂い、触れられなかった歯がゆさまで、すべてが今さっき起こったことのように、すぐとなりを駆け抜けて行く。

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