05

 この週末いろんなことがありすぎて、学校がずいぶん久しぶりに感じる。
 野乃花にいろいろ話したいことがあるけど、どこから話せばいいのか分からなくて、早くついてしまった教室でひとり、考え込む。
 今頃仁さんはまだ寝ているよね。夜型だし。と思いながら、仁さんの寝顔を想像したら表情がほわりとほどけてしまう。

「おはよう、美麗」
「おはよ」
「……あれ? 絆創膏復活?」
「あ、その、これは」

 にやっと笑った野乃花に拉致されて、私は洗いざらい吐かされた。もちろん、仁さんの正体は伏せる。
 これからは、嘘をつかなくても曖昧に濁さなくてもいい。堂々と仁さんのことを好きでいられる。堂々と、仁さんとのことをのろけられる。

「ジンさんって、ロリコン?」

 何も言い返せない。

「ねえ、野乃花」
「ん?」
「今度、野乃花の話も聞かせて」
「え」

 野乃花が驚いたように私を見る。なんだろう、と思っていると、野乃花は首をかしげて呟いた。

「美麗は、他人のそういうの興味ないと思ってた。全然聞かれなかったから」
「……そう?」

 自分のことを聞き返されるのが嫌だったから、という事実は、封印しておこう。
 放課後、帰るのにグラウンドの横を通ったら、篠宮先輩が一人で柔軟体操をしているのが目に入った。声をかけようと思ったけど、やめた。
 先輩と、もしかしたら前のように話せたり笑ったりできるようになるかもしれない。でも、それは私が決めることじゃないんだ。
 それから、ふと思い出す。そういえば、まだ仁さんに言ってないことがある。
 仁さんはたぶん、私がほかの男の子としたって、勘違いしたままだ。誤解、解かなきゃ。
 慌てて帰って、鞄を自分の部屋に放り込んでママに一声かけて仁さんのマンションに行く。
 チャイムを鳴らすと、いつものように仁さんが迎えてくれた。息を切らしている私に不思議そうな顔をする。

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