06

「……? 入って」
「うん」

 来たはいいが、どうやって話を切り出そう。ソファに座ってぐるぐる考えていると、仁さんが目の前に紅茶の入ったカップを置いてくれた。

「どうしたの?」
「……仁さん、あの」
「うん」
「わ、私」
「うん」
「してないから!」
「は?」

 ぽかんとした顔で首をかしげた仁さんに、もどかしくなる。いつも、憎らしいほど私の気持ちを読み取って笑うくせに。肝心なことは何一つ分かってくれない。

「あの、だから、ほかの男の子と……」
「……ああ」

 仁さんの顔が見れなくてうつむいているから、今彼がどんな表情をしているかは分からないけど、声はぐんと不機嫌そうにトーンが下がった。
 手が伸びてきて、抱きしめられる。突然のことに心臓がばくばくと必要以上の仕事をしだした。

「あの、違うの……告白されて……」
「……」
「それで、その、無理やり……」
「最後まで?」
「してない! 少し触られただけ!」
「……いい。もう聞きたくない」

 耳を柔く食まれた。びくっと体が浮き上がるくらいにあさましく反応してしまう。髪の毛をさらっと撫でて、仁さんは私の背中をゆるゆると撫でた。
 その手が不穏な動きをはじめるとともに、耳を口に含まれてねっとりと舐められる。

「あっ……ん……」

 丁寧に丁寧に耳殻を舌で撫でられて、頭の中がふやけそうになる。手は、シャツの隙間から入り込んで背中を撫でながら、器用にブラのホックを外した。

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