04

 野乃花が私を連れてきたのは、屋上に通じる階段だった。屋上は封鎖されていて、そのドアの手前に黄色いプラスチック製のチェーンが張られている。その手前の階段に、座り込む。

「何があったの?」

 野乃花が同じ質問をする。私は、野乃花の隣に座って、仁さんがヴァンパイアであることは伏せて、かいつまんで説明することにした。
 どうせもう終わっちゃったんだから、今更野乃花に隠し立てするようなことはない。

「……ずっと好きだった人に、ふられたの。その人とは、ずっと一緒にいたし、することもしてたけど、篠宮先輩が……」
「ん?」

 この間篠宮先輩との間に起こったことは、彼の名誉のためにも黙っておいたほうがいいいのだろうか。

「…………篠宮先輩に告白されたことを知られて、それでふられた」
「え、待って、意味分かんない」
「……」
「それって、その人は結局美麗のことどう思ってたってことなの? 告られただけで? なんで?」

 やっぱり避けては通れないらしい。話が通じないようだ。

「……実は」

 この間の放課後にあったことを話すと、野乃花の表情が驚きから、やがて納得に変わる。

「……篠宮先輩、思いつめたら一直線な人だったんだね……度胸あるなあ」
「度胸」
「それで、そのキスマーク見られて、彼氏と勘違いされたってことは……」

 野乃花は少し迷うそぶりを見せて、それから言いづらそうに口ごもった。

「その人は……」
「私のことなんか、なんとも思ってなかったの。人と何かを共有するのは嫌なんだって」

 あっさりと私が野乃花の言いたいことを言ってしまったことに、彼女は少し驚いたみたいだけれど。もともと、「餌」と「捕食者」だったのだ、言われなくても分かっていた。
 野乃花は考えるように私を見て、思いついたように口を開く。

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