boy fights girl






(オイラの勝ち!明日の夕飯は秋刀魚の塩焼きでよろしく!)
「るせぇよ」

テレパシーに肉声で答え、ナツはその顔を不機嫌に歪めた。
目の前には、白に緑ラインのセーラー服のようなワンピースを纏った、ツインテールの女。スカート丈は短く、すらりとした足が仁王立ちのように開かれている。
顔に上半分を覆う仮面を着けているが、その形の良い唇といい、金髪といい、間違いなくルーシィで。
もう何日目かになる夜の公園で、ナツはくらりと目眩がするのを感じた。
「待っていたわよ、魔法使いさん」
ナツは昨日と同じようにほぼ一瞬で5体の幽兵を片付けたところだった。
黒い軍服のような衣装を変える暇すら与えられず、茂みから出現したルーシィに頭を抱える。

「何やって」
(ちょっとストップ!)
(あんだよ?)
(こういうのは気付かない振りをするのがお約束なんだ)
(あ?でもこれバレバレだろーが)
(でも指摘したらルーシィが可哀想だよ)

可哀想。そうかもしれない。羞恥もそうだが、何か事情があるのかもしれない。
ナツは考えて、恐る恐る口にした。

「あー、えーっと、お、お前は誰だ?」
「え?」

考えていなかったのか、ルーシィは小首を傾げる。手袋に覆われた右手の人差し指を顎に付け、んー、と唸った。何かを思いついたような表情をしたかと思うと、その人差し指をナツにびっ、と向けた。

「ブロンド仮面よ!」
(うあ、ダサっ!)
「ダサいな」
「うっさい!!」

ルーシィが叫ぶと同時に何かを振り下ろした。びしっ、とナツの立っているすぐ横の地面が抉れる。

「うぉ!?」

見ると、ルーシィ、いや、ブロンド仮面は夜目に見難い黒の鞭を構えていた。その姿はさながら、

「なんだ、SM女王か」
「誰がSM女王よっ!?」
(ルーシィ面白いね)

顔を真っ赤にして鞭をびしびしと唸らせる仮面女王様に、ハッピーが耐え切れずに噴き出した。
ナツはその鞭を避けながら、どうしたもんだか、と考えていた。攻撃は割としっかり狙ってきている。気を抜けば捉まってしまうだろう。
しかしこれは魔法ではない。物理攻撃だ。
ナツは鞭が戻る一瞬の隙を突いて、ルーシィに詰め寄る。だむ、と鞭を足で踏んで押さえ、右腕を掴んだ。

「敵…なのか?」

ルーシィに投げかけた声は疑問というには切なすぎる色だった。ナツが自分に動揺したと同時に、仮面の向こうの瞳も揺れる。
ぱしん、と腕が振り払われた。

「そうよ。あんた…妖精の尻尾の魔法使いなんでしょ?あたしは幽鬼の支配者の魔導士よ。ここはうちの狩り場なの。邪魔しないでくれるかしら」

瞳が光を強くする。ナツはむっとして見つめ返した。

「じゃあ辞めろよ」
「は?」
「辞めろよ、そのファミコン道路。お前も妖精の尻尾に入りゃいいじゃねぇか」
「ファントム・ロードよっ!そんなホイホイ出たり入ったり出来るわけないでしょ!」
「なんだよ、大丈夫だって。オレも頼んでやるから」
「あ、あんたね…」

ナツはどこまでも本気でルーシィに提案している。
ハッピーはきっと頼む役は自分になるだろうとぼんやりと考えていた。ルーシィは面白いし、マスターに頼めばもしかしたら許可が下りるかもしれない。
それにしても、あの鞭…どこかで見たような…。

「…癖に…」
「え?」

ルーシィはぷるぷる震えて、下を向いていた。きっ、とナツを見上げたときには、目に涙が浮かんでいて。

「何にも知らないくせに、適当なこと言わないでっ!」
「お、おいっ!?」

急に走り出したルーシィを追って、ナツも駆け出す。ハッピーも慌てて後を追った。






初期の頃の黒鞭採用。


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