【サムネ詐欺】23歳差で動画撮ってみた
本当にこの世はオジサンに対して厳しい。
例えば、満員電車に乗れば痴漢だなんだって。俺は確かに見てわかる通り女性の影もないし、見た目だってダサダサのショボショボのその辺にいるようなオジサンだ。だけど絶対に痴漢だけはしないのに、今朝だって痴漢だと間違われた。
幸いにも両手をあげて乗っていたから、隣の人が指摘してくれて無事に解放された。本当に痴漢されていたら申し訳ないけど、なんで俺だったんだ。
お陰で仕事には遅刻するし、挙げ句の果てに……。
そんなオジサンは会社にも要らないんだと、暗にそう言われた。
年齢が高い人を切り捨てて、ピンピンしてて長く働いてくれる今時の若者を残すらしい。
そう言ったのは今までお世話になっていた社長だった。
このコロナ禍で、ウチも大分苦労した。
俺のいる……いた会社の商品は大体に半導体が含まれている商品ばかりだった。仕入れ元の企業が半導体不足の煽りを受けて製品を造れなくなり、そしてうちの会社も当然売る品物が無くなってしまった。
だから色々と他の会社の卸売りも受け入れて段々と安定はしてはきたが、やはり取引先がガラッと変わり今までの安定した業績は残せなくなっていた。
そして不景気だった時の煽りが遅れてくるのを見越して、今回会社は熟年社員に早期退職という肩叩きを実施したらしい。そして運悪く、俺もその対象にいたとのことだった。
俺は確かにアラフォーのオジサンだ。だからってまだそんな……これからなのに。
確かに同年代に比べたら少しだけ受注の数は少なかったとは思う。だけど昔から懇意にしていた企業からは変わらず受注してもらっていた筈だ。……それなのに。
俺は昼間から飲むことにした。
逆に言うと昨今は昼からしか飲めない様になっていたけど。
俺は適当に入った居酒屋の店主に空になったビールのジョッキを見せた。
店主はアイヨ、と元気に声を出して裏に引っ込んだ。
「いいなぁ、俺も居酒屋とか開いてみちゃったりなんかして……へへ」
今まで結婚していなかった事を今回初めて良かったと思えた。確かにタイミングが無かったこともあるが、元々諦めていたのだ。こんな度胸もない俺が、妻がいて子供もいる……そんな家庭を持つだなんて、そんな事夢に見たことすら無かった。
子供は好きだけど、育てられる様な器量もあるとは思えなかったし、何よりまあ相手が居なかった。彼女がいたのなんてもう五年を過ぎた辺りから数えるのを辞めたし、デートだってここ数年あったかどうか……。
「アイヨ!」
「ありがとうございます……」
店主がドン、と勢いよくジョッキをテーブルに置いた。泡がフワリと揺れて少し溢れた。
俺は気にせずにジョッキを持ち、グイと一気飲みをする様にジョッキを傾けた。
いつの間にか、見知った道を歩いていた。
身体がポカポカしていて、なんだか気分がとても良い。こんな日なのに、酒を浴びるほど飲めば気分も良くなるんだな、なんて頭の片隅で少し考えたり。
千鳥足で家まで向かうと、見知った背中が先を歩いていた。
「みひろ……?」
「……吾妻さん!」
思わず名前を呟くと、直ぐに美紘は振り返ってくれた。そして俺の今の姿を見ると驚いた様に目を丸くした。駆け寄って来た美紘は、俺よりも高い背を少し縮めて俺の肩をポンと叩く。
「どうしたの、酔ってる?」
「みひろー……うぅ」
「なになに、どうして泣いてるの……泣かないで」
高校生の美紘に年甲斐も無く縋り付いた。
美紘は俺がアラサーの時からの仲だ。そもそもその頃美紘はまだ小学生にも達していなかった。
美紘はお隣さんの廣瀬さんちの息子で、美紘が小学生に上がる少し前にご夫婦でお家を建てて、うちに挨拶をしに来た時からの仲だ。当時の美紘はまだ随分とシャイな子で、廣瀬さんご夫婦の後ろに隠れていた。
俺はその頃からもうとっくに結婚は諦めていて、だけど子供は大好きだった。だからこそ美紘が可愛くて、どうにか怖がって欲しくなくてそっと手を差し出して、偶然家にあった子どもが好きそうなお菓子をあげたんだ。
それからなんだかんだと美紘を構う機会があって、美紘も徐々に懐いて行ってくれて、今でもたまに廣瀬さん一家にお邪魔させていただいている。
それに美紘は今でも懐いてくれていて、たまに遊びに連れて行ったりもする。でもこんなに酔っ払った姿は初めて見せるかもしれない。
「どうしてこんなに酔っ払ってるの……とりあえずウチに来て。母さんたち今いないから」
「うぅ……ごめん」
「いいよいいよ、なんか辛い事あったんだよねきっと」
「うう……」
『辛い事』と言われて、今朝の会社のことが頭を過った。
辛いなんて言葉だけじゃ済まされない、だって俺が新卒の頃から勤めて来た会社だ。他の企業に入ったことすらないのに、今からなんの仕事に就けと言うんだ。
幸か不幸か、これから有休消化期間に入る。それだけはちゃんとしてくれた会社にはありがたいかも知れないけど…。この一ヶ月と少しで、果たして次の職場が見つかるのだろうか。
「それでどうしたの?」
無人だった家に入れてくれて、水も飲ませてくれた。リビングじゃ気を使うだろうからと美紘の部屋にも入れてくれた。
美紘は本当に気を遣えるいい子だ。きっと廣瀬夫妻も安泰だな。
「うう、仕事が……」
「ん?」
美紘に、こんなこと言ってもいいのだろうか。いい歳したオジサンが、会社を辞めさせられて……それで酔っ払って高校生にお世話されているだなんて……。
「大丈夫だよ、ここには吾妻さんを傷付ける人やものはないから。安心して僕に相談して」
「み、みひろ……」
「あはは、どうしたの」
俺は思わず美紘に抱き付いた。酒臭いかも知れないけど、今日唯一遭遇した優しさだ。思わず抱きついてしまうのも訳ないだろ。
「それで、仕事をクビになっちゃったの?」
「そうだ……美紘にこんなこと、恥ずかしいけど」
「恥ずかしくなんて無いよ。先輩も内定取消しになった人とか沢山いるみたいだし」
このご時世、仕方ないよね。
そんな風に言える美紘はとても良い子だと思った。
「それに……なんで吾妻さんをクビになんてさせたんだろうね。その会社はおバカだね、こんなに会社に尽くしてきた吾妻さんをポイって捨てるなんてね」
「う、うう……そ、そうなんだよ」
いつの間にか俺は美紘の膝に頭を乗せて、ティッシュに埋もれる様にしながら泣きじゃくっていた。
「ほら、お水飲まないと脱水しちゃうよ」
「う、……」
ストローを刺したペットボトルから水を飲ませてくれる。見上げた美紘はとても優しい表情をしていた。
こんなおじさんに、なんでこんなに優しくしてくれるんだろう……本当に美紘は良い子だ。今は美紘の優しさが痛いほど身に沁みる。
「……実はね、僕も吾妻さんに相談があるんだ」
「ん、どうしたんだ、言ってみ」
「……あのね、ユーチューバーって、知ってる?」
「う、ううん……聞いた事はあるぞ」
なんか、よく分かんないけどたまに逮捕されてたりするやつだよな……若い人に人気だとか、子供に人気の職業だとか。たまに動画を見たりするけど、その道に明るいわけじゃない。
「そうだよね。それでね、僕も誘われてから結構動画出してたりするんだ」
「ん? ふうん……そうなのか」
「うん、見たことないよねきっと」
「いや、最近全然そう言うのついて行けなくて、ごめんな」
まさか美紘がそう言うのに出ていたなんて、全然知らなかった。確かに美紘は贔屓目を抜いても格好いい顔立ちをしている。所謂美青年っていうのはこんな感じなのかってくらいには目鼻立ちが整っている。そんな美紘が動画を出しているんだから、きっとそれなりに人気なのかも知れない。
「いいのいいの! それで最近グループを抜けようかなって思ってて……」
「え、どうしてだ?」
「なんだか最近居心地が悪くてね。でもまだ僕はやりたい事があって」
「そしたら一人でも続けた方が……」
「うん、そうなんだけど……」
そこまで言ってから、美紘が急に言いづらそうに口を噤んだ。
「ん、どうした。言ってみ」
「あのね、もし良かったら一緒に動画に出てほしくて」
「……え? 俺が?」
「そう……だめ、かな」
俺はまだ酔っ払っているのかと思った。どういうことだ、俺に動画に出て欲しいって? またなんでそんなこと……。
「ま、待て美紘。俺なんて出ても何も面白くないぞ? というか、どこにそんな需要なんて」
「どうせなら大好きな人と一緒にやりたいんだ。大丈夫、吾妻さんは出てくれるだけでいい。他は僕が全部やるから」
「え、ええ……?」
「お願い、吾妻さん……夢なんだ」
美紘の表情はすっかり弱々しくなって、眉も目尻も下がって直ぐにも泣きだしそうなくらいだった。
「わ、分かった! 美紘がやりたいこと、俺も協力したいから」
「ほ、本当に! 良かった、ずっと吾妻さんと撮りたかったんだ」
「え、そ、そうなのか……でも俺、本当にあがり症だから」
「大丈夫。最初は僕もそうだったよ」
美紘は凄く嬉しそうに笑っていたが、俺はそう言ってから少し後悔しつつあった。
それからすぐに俺は家へ戻って、出来るだけ沢山寝た。起きてから家族にもクビになった事はすぐに話して、今の時期は仕方ないから、と理解してもらった。それに何よりも結婚してなくて良かったな、なんて父さんにも言われてしまった。
「吾妻さん、今日からは名前で呼んでもいい?」
「え、うん。いいに決まってるだろ」
「蒼さん……ふふ、蒼さん」
美紘はとても嬉しそうに俺の名前を呼んだ。小さい頃は『ソウちゃん』なんて可愛い声で呼んでくれてたのに、いつの間にか『吾妻さん』なんて他人行儀になっていたから気になっていたんだ。
まあ、大人になったからだとは思っていたけど、今思うと寂しかったのかも知れないな。
「じゃあ、早速動画回していくね」
「う、おう……」
どんな感じに撮るのかも聞かされていなかったから美紘に尋ねると「それも良い味になる」と美紘はそう言った。だから俺は何があっているのかも分からず適当に喋ってみる。本当に普段と変わらない、美紘と二人で過ごしている時のままだ。
「ん、これ美味い」
「本当? ちょっとちょうだい」
「ほら」
「ん、美味しい……あ、ほっぺについてるよ」
スプーンに乗ったケーキを美紘に食べさせる。頬にクリームがついていたみたいで、年甲斐もなく美紘に指で拭われてしまった。
今日は「コンビニケーキを食べ比べてみた」というお題らしい。
何がしたいのかはよく分からないけど、最初の動画は自己紹介をしただけだった。俺の生い立ちと、美紘の生い立ちの話と俺たちがなんで一緒に動画を撮っているか、なんて事も話した。
こんなんで美紘のやりたい事が叶っているのだろうか?
全く意図が全然分からないけど、とりあえず美紘がやりたいことには付き合ってやることにした。ま、他にやることも無いしな……。
「こんな、ケーキ食べてるだけの動画なんか誰が見るんだ?」
「いいの、蒼さんがこうやって楽しそうにしてるだけでみんな幸せなんだよ」
「えぇ……おじさんがケーキ食べてるだけだぞ」
「ふふ、良いんだよそれで」
最近の流行りはよくわからない。完成した動画を見なくともよく分かってる。オジサンがイケメンの高校生とケーキを食べているだけだ、美紘には華があるから兎も角、俺のどこに需要があるんだ……。
そんな疑問を抱きながらも、俺は美紘の指示するままに動画に出続けた。時には一緒に料理をしたり、イケアやコストコに行ったり、水族館へ行ったり、一緒に寝るだけなんてだけの動画も撮った。
本当になんて事ないことばかりで、こんな日常の一コマみたいな動画のどこに需要が……なんて思う毎日だった。俺は暇も潰せたし、美紘も楽しそうだったから特に指摘はしなかったけど。
流石に仕事も見つけなければと思って就職エージェントに登録してはいるが、なかなか自分が条件に合う仕事がない。どこも若い人材を求めているみたいだった。
まあ、仕方ないよな……。
だからアルバイトをしようと美紘に相談をしてみると、もう少しで広告収入が入ってくるからと止められたのだ。
広告収入とは、なんて思っていたけど動画を見る時にたまに広告がついていたのを思い出して、ああやって稼いでいたんだなとどこか他人事のように考えていた。
「蒼さん、どうしよう」
「わ、ど、どうしよう……っ」
ある日「怪しい薬を飲んでみよう」なんて美紘が言い出して、俺は成分をちゃんと見てから大丈夫そうだと思って了解した。どうせ美紘が持ってくるものなんだから、危険はないんだと過信していた。
飲んでから暫くすると、美紘が急に顔を赤くしだして、ズボンだって膨らんでいた。
美紘があらかじめ剥がしていたラベルを引っ張り出すと、そこにはデカデカと「ラブドラッグ」なんて書いてある。その文字に思わず目が飛び出そうになった。
「と、とにかく水……!」
とりあえず水を飲ませようと立ち上がったが、美紘にズボンを掴まれていたようで足が引っ掛かり、ドタリと床に転がった。
「うぅ、蒼さん……つらいよ」
「ええ、ど、どうしたらいい?」
「たすけて」
弱々しい美紘の声に、俺はギュッと目を瞑った。
「チャック、外れない……っ」
「う……わ、分かった。外してやるから」
男だから分かる。そんなに切羽詰まるほどに興奮したことは無いけど、多分きっと男なら辛い状況だろう。
俺は美紘のズボンのホックを外して、チャックを下げてやった。すると黒のボクサーを濡らした美紘の股間が見えて、俺はギョッとしてしまった。
小学生から美紘を見ているが、改めて成長しているなと股間を見て思ってしまった。
「ぱ、パンツもキツイ……」
「え、ええ……」
「はやく、下ろして」
「わ、分かったから!」
なんだか色気が出ている美紘に逆らえなくて、俺は恐る恐るボクサーパンツを引っ張った。その瞬間ブルンという効果音がつきそうな程に主張した美紘のそこが飛び出した。そこは痛いほどに主張していて、真っ赤になって腫れ上がっているようだった。
「だ、大丈夫なのか? これ」
「痛いよ……痛いのに、触りたい、どうしよう蒼さん」
「じ、自分でできるか?」
「できない、どうしよう」
こ、こんなことで病院行くなんて、絶対出来ないよな。美紘ももう高校生だし、思春期なのにそんなこと出来ない。うう……俺がもっとちゃんとしている大人だったら絶対に止めたのに!
「手で触ったら、痛いか?」
「分かんない、やって……」
「え」
俺はプルプルと主張しているそこに目をやった。その瞬間手を掴まれて、強引にそこに手をかざされる。
「はやく」
涙目で震えるようにそう言った美紘に、俺は観念して美紘の息子を握り込んだ。決して痛く無いように優しく包んでやる。美紘は眉間に皺を寄せながらも気持ちよさそうに目尻を赤くした。
俺はどこからともなく湧いてきた罪悪感をグッと堪えて、これは仕方のない事だと美紘のそこを慰めてやった。
「動画回ってるから、取れ高できたね」
「えっ」
事を終えた美紘に小さくそう言われて、俺はバッと振り返りカメラを見た。
ずっとカメラが回っていたのだ、俺は気が動転して汚れた手にも関わらず顔を覆った。
「汚いよ。ほら手を拭くね」
「や、今の、今のうつってた……?」
「うん、バッチリね。きっと百万回再生は優にいくよね」
「え……? ひゃ、百万回……?」
「そうだよ。百万人の人が見るんだ、凄いでしょう?」
ウェットティッシュで手を拭われているが、そんな事気にしてられない。俺みたいなオジサンが、こんな若い男の子の股間を弄っているだなんて……そんなのが世の中に上がったらどうなる。俺は間違いなく刑務所行きだ……。
「ま、まて……こんなの世の中に広めないよな?」
「ん? 勿論アップするよ! 慌てちゃって可愛い蒼さんをみんなに見てもらうんだ」
「へ……? そ、そんな事したら出歩けなくなる……俺も、美紘もだよ?」
「それは願ったり叶ったりかもね、はは」
美紘はなんて事ない、なんて顔をしてカメラの映像を確認している。
「あ、ほら見て。良いアングル」
「あ……あ、や……」
美紘に見せられたそれは、俺が美紘の股間を一心不乱に扱いている姿が再生されていた。
な、なんでこんなところ……。
「も、美紘やめて……本当にこんなの、やだよ」
「そう? 蒼くんがそういうなら仕方ないね。これは僕のコレクションに納めておくね」
「あ、うん……」
こんなの、公開できるなんて……美紘はどんな動画にしてるんだ? 本当に大丈夫なのだろうか。急に不安が押し寄せてきて、俺はサッと心臓のところが冷たくなったような気がした。
「美紘、どんな風に今までの動画を載せているんだ……?」
「えっとね、これだよ。今まで言われなかったから見せなかったけど、結構登録者いるんだよ」
「……え」
そこには【M&Sカップルチャンネル】なんて名前で動画が何個も載っていた。そして美紘が指さしたそこには、何と345kの文字が映し出されていた。
「な、なんでそんなに……? 一体どうなってるんだ」
「結構凄いでしょう? みんな僕たちのこと恋人として応援してくれてるんだよ」
「あ、あ……嘘だろ……」
「僕ね、ずぅっと蒼さんとカップルチャンネル作ってみたかったんだ……やっと夢が叶って、みんなにも応援されて……凄く嬉しいよ」
美紘がパッと長い腕を伸ばしてきて背中に腕がまとわり付き、そのままギュウと蛇のように抱き締められる。
「ひ、」
「蒼さん、凄く人気だよ。毎回可愛いってコメントが増えてるし」
「あ、俺こんなの許してない……っ」
「言ってなかったから、びっくりしちゃったよね。ごめんね蒼さん」
目の前で美紘がコメント欄を開きスクロールする。そこには俺と美紘を本当にカップルだと思っているようで、『羨ましい』、『かわいい』なんていっぱい書いてある。
「今日は別のことしようね。他にもいっぱいネタならあるから」
「う、うぅ」
チュ、と頬にキスをされて、それからカシャリとスマホが鳴った。
「この写真も上げたら直ぐにイイネがつくしね」
「うそ……」
インスタにもいっぱい写真が載っていた。美紘が小さい時に俺と撮った写真まで出てくる。俺の寝顔にキスをしている最近撮ったらしき写真まで……美紘は一体何を考えているんだ。
「こんなの、廣瀬さんたちにバレたら……」
「母さんも、父さんも知ってるよ。すごく応援してくれているんだ」
「え……?」
「俺が小さい時から蒼さんのことを好きだって知っていたから、凄い喜んじゃってさ。ちゃんと登録もしてくれているみたいだよ」
「……!」
顔がカッとなって熱くなった。嘘だろ、最近だって顔を合わせていたのに何も言っていなかったじゃないか、なのになんでそんな……。
「僕が蒼さんは恥ずかしがり屋だから言うのやめてって言っていたんだ。びっくりさせちゃうからね」
「びっくりなんてもんじゃないよ、こんなの……」
廣瀬さんたちとは歳も近い。美紘の親が俺でも決して可笑しくない年齢だ。それなのにこんな、カップルだなんて……。誰も犯罪だと言わないのか?
「蒼さん、こんなに見てくれてる人がいるんだからまだ一緒に続けてくれるよね?」
「……」
「それとも辞めちゃう? ファンの人も、僕の親も悲しんじゃうだろうな」
「……なんてこと」
「勿論、辞めても良いんだよ。だけどずっとこの動画は世の中に残るからね、今更消せないんだから」
にっこりと笑う美紘は今や悪魔に見える。
あんなに小さい時から、親のように見守っていたはずの美紘が……こんなに立派に育ったと言うのに。もしかして俺のせいでおかしくなってしまったのか……? 俺がそばに居続けたから、何かを勘違いしてこんなこと……。
「もし続けてくれるなら、早く動画撮ろう。ストックしておかなきゃだから……ね」
俺は美紘とそれからも奇妙な動画を撮り続けた。
一緒に旅行へ行って露天風呂に浸かったり、普通にショッピングしたり、部屋でだらだらと過ごすだけの動画だって撮ったりした。
だけど変わった事があって、事あるごとに美紘は俺にキスを迫った。絡み付いてくる腕の頻度も多くなったし、時にはすぐ見える所にキスマークをつけられてカメラの前に立たされたりもした。
普通の時の美紘はいつも通りに可愛い高校生という感じなのに、カメラが回ると急に雄の顔を出すようになった。今やどちらが本当の美紘なのかすら分からない。
隣同士の家なのにも関わらず二人の距離が遠いからと、今では二人で部屋を借りて同じところで暮らしている。
さらには動画上で俺の身体がビクつくのをコメントで指摘されてからは、俺の身体が美紘に慣れるようにと夜毎マッサージをされるようになった。それからたまに最近は下の世話までされている始末……。
今の生活は完璧なまでに美紘に俺の手綱を握られているんだ。
肝心の登録者の方も減るどころか増える一方で、案件やら雑誌に載るとか言う話さえ出て来ている。俺はそれに関してはノータッチだから、美紘がどんな判断を下すのか分からない。だって俺はそれに従う迄だから……。
「さっきね、ニュースでやってたんだけど……このご時世に退職させられた人って、どこでも働けるから退職させられるらしいよ」
「ぁ……ぅ」
「今こうなってるってことはきっと蒼さんもそうだったって事だよね」
ペチリと冷気に晒されているお尻を叩かれて、敏感になっていた身体はブルリと震えた。