寝食共に




「どうした?」


浮かない顔をしている、そう言って司郎は私の顔を覗き込んだ。

どうやら見てわかるほど今の私は変な顔をしてたみたいだ。


「うん…あのね、大事な話があるの。」

「……?」


首を傾げた司郎に向き直り、先日少佐から聞いたことを説明する。

もちろん、極力彼に不安を与えないように。

最初は普通に聞いていた司郎も、話が進むにつれて顔が険しくなっていった。


「じゃあ、こっちの俺が帰ってきたら…」

「もとの生活に戻っちゃうね。」

「嫌、だ……」


苦しそうに顔を歪めた司郎は、ぎゅっと私を抱き締める。

というより、抱きついたに近かったかもしれない。


真木ちゃんとでは、絶対にできないことだ。


「大丈夫だよ。あっちにも私はいるし、あっちの方が若い分可愛いかもしれない。」

「でも…」

「まだ何か不安?」

「…あっちのなまえは、俺のこと好きじゃないかもしれない。」


司郎の腕の力が強くなる。

そういえば、意地悪して10年前の私の好きな人は言わなかったんだった。


「心配しなくていいよ。10年前の私も、司郎が好きだったから。」

「…っ……」

「どう?早く帰りたくなってきたでしょ?」

「…そんなこと、言ってよかったのか?」


きっと、未来が変わってしまうことを恐れてるんだろう。

不安になるだろうから、帰ったときに記憶が消えることは話してない。


「大丈夫だよ。それに過去の私には幸せになってほしいからね。」

「…俺は、こっちでもなまえと真木司郎が一緒に幸せになってほしいと思う。」

「………」


司郎の腕が少し動いて抱きつくような形から抱き締める形に近くなった。

私が彼の言葉に動揺したことがわかってしまったからかもしれない。

私は慌てて彼から体を離した。


「そ、それでね!真木ちゃんと司郎が顔を合わせるのは良くないかもしれないから、真木ちゃんが帰ってくる頃には司郎を私の部屋に匿ってって少佐に言われ、たん、だ、けど…」

「…っ……」

「いい、かな…?」


快諾するとは思ってなかったけど、やっぱり眉間にしわを寄せてる司郎。

そうだよね、いきなり話逸らした上に私の部屋に匿われろなんて、気分悪いに決まってる。


「あっちの俺が帰ってくるのが…」

「10日後くらい。だから、少し前後することも考えて1週間後くらいから私の部屋に……」

「それより前は?」

「え…」


言われたことの意味がわからなくて彼を見ると、やっぱり険しい顔をしていた。

そういえば、来たときよりちょっと背伸びたな、なんて暢気なことを頭の片隅で思う。


「だから、それより前から、なまえの部屋で過ごしてもいいか?」

「え、構わない、けど…」

「じゃあ今日からこっちで生活する。」

「えぇぇ…!」


色々持ってくる、そう言って出ていった彼は、さっきよりずっといい表情だった。

こっちに来るってことは、同棲…ってこと?







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