俺様的勧誘方法 | ナノ
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首が痛い程見上げた先には朝から凛々しいお顔が。眠気なんて、微塵も感じさせない。低血圧な律にしてみれば羨ましいとも思えるが、彼になりたいとは思わない。
「なんで俺を無視するんだ小林律!?」
絶対に思わない。
「うるさ…無視なんてしてませんよ」
「そ、そうか…?」
「(え、律今うるさいって言ったよね?会長聞こえてないの??)」
ポツリと悪態をついた律と、それに気付いているのかいないのか定かではない朝からうるさい会長を交互に見て、親友の斗真はとりあえず笑いを堪えるようにふるふると肩を震わせた。
その様子を横目で見ていた律は、もう一度狩野を見上げてから、とりあえず聞いてやろう精神で首を傾げた。
「会長、俺に何か用ですか」
「そうだ、忘れていた」
無いって言えと心の中で呟いていた律は出そうになった溜息を飲み込んだ。
「小林律、お前を生徒会に入、」
「らないです」
即答した律に目をカッ!と見開いた狩野がダンッ!と机を叩いた。被せて答えた事も不満だったのだろうか。息を殺していたクラスメートの肩がビクリと揺れたのに気付いた。だが、それと同時に気付いたのは、狩野が机を叩いた手をこそこそと撫でていること。絶対突き指したな。
「大丈夫ですか」
「小林律が生徒会に入ればな!」
「指、ぶつけたんでしょう。大丈夫ですか」
「なっ…!」
驚いたように声を上げる狩野に、律は少し眉を顰めた。大丈夫なのか大丈夫じゃないのかどっちなんだ。
だが律の表情に気付いているのか気付いていないのか、嬉しそうに口角を上げた狩野は、パッと律の手を両手で掴み上げた。手は心配ないみたいだな。
「うわ、なに」
「やっぱり小林律は生徒会に入るべきだ!な!?」
「いやだから俺は…」
「迷うなら今日の昼休みに生徒会室に来い!実際の仕事風景でも見ていけ!」
「いや、」
律がしつけぇなコイツと舌打ちをしようとしたところで、今まで黙っていた親友が微笑みながら狩野を見上げた。
「あー、会長、それは無理ですよ」
「…斗真?」
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