創造主/ギン+ウルキオラ

白い服の男が廊下の先に立っていた。弧を描く様に吊り上げられた、薄い唇と細い目。服に同化して仕舞いそうな迄に白過ぎる肌、そしてそれを完璧な形で覆う白銀の髪。

「どないしたん、ウルキオラ」

彼の薄い唇が言葉を紡ぐ。低すぎず、高すぎもしない艶やかな声音がだだっ広い廊下に響く。空気を震わせたその反響が完全に消えて仕舞ってから、ウルキオラは口を開いた。

「市丸様、」

「何か、あったん?」

「藍染様に用があるだけです」

言外に、用があるのはお前では無いと告げる。ウルキオラは、正直市丸の事が好きでは無かった。人を食ったようなその笑みも、嘲りを多分に含んだその物言いもあまり好ましいとは言え無かったし、何より。特になにもしてい無いのに、ウルキオラの主である藍染にいたく気に入られているのが厭だった。今だって広い虚夜宮の藍染の私室の近くにウルキオラが居れるのは藍染に呼ばれたからだ。統率官である東仙すらも無断では立ち入らない場所。なのに、市丸は酷く自然にこの場所に出入りする。市丸は普段は滅多に破面達の前に姿を現さない。たまに現れても絶対の神である藍染に何等かの敬意を払う素振りも見せず惟、笑う。そしてそれを許容する藍染に口さがない者は、市丸を藍染様の寝子だと呼んだ。男にしては細い身体をさしてか、白い肌をさしてか、或は彼を形作る全てをさしてか、彼等はそう噂する。真実味を帯び過ぎたその話は、既に虚夜宮に於ける市丸の位置を決めて仕舞っていた。

「あの人やったら、今部屋におるよ」

少し、ほんの一瞬だけ呆けていたウルキオラを見透かした様に笑う市丸は、はよう行ってやりぃ、と付け加えた。軽薄に笑う市丸からは全く霊圧を感じない。抑えているのか、それとも噂通り力等微塵も持たない惟の色子なのか。しかし、そのどちらであっても自身には何の関わりも無いことだ、と胸中で結論付けてにやにやわらう市丸に返事を返すこともなく、ウルキオラは白い衣を翻した。


(彼の存在に自分の意思は関わらない)





ウルキオラは多分、市丸のことが嫌いだけど、それが意味無いことだって思ってそう。





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