研究心旺盛/藍ギン


微妙なエロスに注意。



白痴美、と云えば良いのだろうか。ギンの美しさはそこにあるのだと思う。彼は別に知能が遅れていると云う訳では無い。寧ろ、天才と呼称するに相応しい品格を備えていた。けれど白痴と云う言葉がギンを、まるで切り取った様に正確に表しているように思えてならない。傍にいる筈なのに半透明の膜に包まれたような存在感とか。視覚的にも感覚的にも、病人のような青白さとか。狡猾な狂気の中に垣間見える、幼さを孕んだ純粋とか。触れれば壊れて終いそうな、ギンを構成している存在全てがまるで己とは違う次元で生きている様だった。指の腹で彼の胸を愛撫する。その存在を確かめる様に、蛞蝓の這う速度で。精神ではどうにも捕らえられそうに無いからせめて身体を、物理的にギンを捕らえてみたかった。

「ぁ、ん」

ギンの口から甘い吐息が漏れる。先走った精液の生臭さが鼻孔をついた。この瞬間だけは彼は現実のものとなるのに。どんなに凌辱して屈辱を与えてもギンの存在はふわふわと、この腕から擦り抜けた所で笑っている。白濁と云う低俗な愛液も、彼に付着した途端その存在を見失って仕舞う。それが酷くもどかしい。全てを手にしなくては気が済まない現実主義者では無いけれど幻のような彼の輪郭を、身体の奥底を暴いてみたかった。これではまるで悪い病気のようだと自嘲する。

「君は、何処にいるのだろうね」

「さあ、」

ギンが薄い唇を吊り上げて笑う。ほら、また。ギンはその存在を失った。確かにこの両腕の内に抱いている筈、波打つ白いシーツに抑え付けている筈。なのに空気と交わっているような感覚に陥る。ああ、煩わしい煩わしい。彼を覆う薄気味悪いベールを剥ぎ取って仕舞いたい。奥底が見えないことが、こんなにも気持ち悪いとは思わなかった。誰に向けるでも無いその苛立ちを押し殺す様に、ギンの薄い唇を無理矢理にこじ開けて舌先で口内を蹂躙した。



(それは愛と呼ぶにはあまりに科学的で)


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