質量=幸福の法則/ギン乱*

エロス注意。



(ギンの中指と云うものは。)

その指先は、その手は白く細く骨張っていて、どうにも死人の様であるのに何故かそこに存在するのはある種の美しさ。女らしいとか、雄々しいとかそんな下らない性別を越えた芸術品のような一品。病人のような白い肌がそれを助長している。

「ギン、だめ」

態と体を捩らせて、唇を拒否の形に歪めれば、彼は捕食者の目で数秒私を見つめた。閉ざれた瞼の奥の空色が私を見透かしている。誰よりも嘘に長けた彼にはきっと私の嘘などお見通し。しかしギンは無言のまま行為の続きに戻る。小煩い事を嘯いた私の唇を塞いで舌が口内で蠢いていた。さっきよりも荒々しくなった手と舌の動きが私を満たしてゆく。

「何があかんのん、」

彼の中指は一層激しく動かされる。くちゅり、と卑猥な音に脳髄が震えた。ギン。私の頭の中はギンでいっぱいいっぱい。体内に収まり切らない劣情が唇から蜜の様に零れ落ちる。

「なあ、乱菊」

名を呼ばれて反応したそこは子宮だった。じくん、と痺れるように膨らんだ気がする。そこ確かに熱を持っていて血液が脈打っているのが身体全体で感じられた。これは生殖行為なんかじゃなくてただの愛情表現で。質の悪い熱病に浮された様に互いを貪り合う。この腹にできるかもしれない寄生生物など要らない。只々ギンだけが欲しい。やがて私の胎内に挿入されるはずの物。そこから放出される精液も私は一滴も残さずに啜り上げたい。他のどんな生き物にも渡さない。私の欲望の侭に。純粋に私を貴方で満たす為に。

「ぁ、」

ぬるり、と抜かれた中指。指一歩分、私の膣内から質量が消えた切なさに下腹部が疼く。ギンが見せ付ける様に目の前に今まで私の中にいた指先を持ち上げた。微かに生臭いそれは血塗れ。

「続ける?」

こくり。素直に私は頷く。ギンは満足そうに微笑んでその赤に染まった中指をぺろりと、舐めた。彼の薄い唇に少しだけ付着した紅は酷く煽情的。男のくせに妙に色っぽい。じくりじくり、と私のしとどに濡れた入口が疼いた。

「ん、」

胎内に侵入して来た、中指とは比ぶべくもない圧迫感。質量の分だけの幸せが私を犯す。もう何もわからない。爪先から頭の先、全部が性感帯みたいで、幸福感に酔いしれた。身体の中が、脳裏の奥がギンでいっぱいいっぱい。ああ、だから。こんなにも気持ちが溢れている。



(流された血は私の感情でした)









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