理解の範疇外/藍ギン

暴力表現。
閲覧注意。









布で被われた両目の為に、今が何時かはわからないが此処が何処かは理解しているつもりだった。藍染の、自廷。その離れ。通常の仕事の後に、行き成り呼び出され此処に連れて来られたのは何時の事だったか。数時間前の事にも、数日前の事の様にも思われる。眼を塞がれていなければ、それを掴む事も出来ただろうか。或は、見えていても同じなのかもしれない。


膝立ちにさせられた身体が揺れる。今にも倒れて仕舞いそうだった。出来るだけ楽な姿勢をとろうと身を捻る。後ろできつく結ばれた両手首が、ギリと擦れて擦過傷を増やした。未だ癒えない傷の上に重ねられた傷口から赤い血が滴り落ちた。ぴちゃり、と云う微かな水音にどれだけの血を流したのかを思い知る。同時に、がつんとまた一つ口許に衝撃が走った。頬を、足で蹴られた。その勢いで無抵抗な身体が横へと吹き飛ぶ。しかし、髪を容赦無く反対側に引かれたことによって、宙ぶらりんの状態で止まって終った。

「 ぁ、 」

床に身を委ねることも許されなかった。もう、力等残ってはいなくて必死に為っても自身の身体を支える事さえ出来ない。藍染が掴んだ髪だけが、身体を上へと吊り上げていた。掠れた筈の喉が、張り付いた様な呻きを漏らす。

「ほう、」

藍染が耳聡くそれを聞き付けたのが空気を介して解った。塞がれた視界では他の器官ばかりが鋭くなる。ぱん、と渇いた音がして、頬を張られたのだと気が付くのに数秒。散々嬲られた身体は、痛みを知るのさえ鈍かった。

「声を出して良いなんて、誰が許したのかな」

藍染が手を離したせいで床に倒れた身体は反動で微かに跳ねる。頭を踏み付けられた。ごり、と片足に全体重を乗せられる。床と足の間で骨の軋む音が聞こえる様だった。ギンはきつく唇を結び、空気が漏れるのを堪える。噛みしめた唇からは血が零れていたが気が付かない振りをした。

「返事は、無いのかな」

「…ぁ、ぁぁ、 ごめんなさ、」

折檻の主が望む様に必死に張り付いた喉を開くが、最後迄は言わせて貰え無かった。頭から離された藍染の足が無防備な腹を蹴る。もう既に何度も内容物を吐き出した胃袋には何も残ってはいないけれど、それでも生理的に何かを吐き出す。酸っぱい胃液がからからに渇いた喉を通過して、口から溢れた。

「君は本当に煩いね、」

藍染は酷く理不尽な事を言うと、丸きり興味を無くした様に部屋を出て行って終った。



(最初からわからない)





[ 12/33 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -