航海一日目午後八時、クイーンズレストランにて


レストランへ入ると初日だかなのか、それとも仕様なのか大きな円卓が一つ置かれていた。真ん中にはテーブルクロスに似つかわしい真っ白い薔薇が美しく飾られている。料理は皆が揃ってから、という魂胆なのだろうナプキンやフォーク類しか並べられてはいなかったが、先客がいた。空席が3つしか残されていないところをみると、寧ろ火神達が最後というところだろう。氷室が美しい笑みと共に謝った。

「お待たせして仕舞ったようですみません」

スタッフに引かれた椅子に氷室、火神、紫原は腰をおろす。

「いやいや、私たちも今来たところだからね」
「ええ、ほんの数分前に」

応えたのは一組の男女。テレビで幾度か見たことのある顔だった、確か上院議員のエドワードと、その妻ディアナ。エドワードの方はテレビで見るよりも幾分か赤い顔で、その腹は豊かさの証しとでもいうように張り出していた。けれどその謀略に長けた様な面構えはとても60近い爺だとは思えない。ディアナの方は確か50代後半だったか、その老いを隠すように化粧を重ねてはいたが昔は美人だったのだろうと思わせるだけの顔立ちはしていた。
その後互いに自己紹介をしたりしているうちに料理が運ばれて来た。火神は会話に不自然にならぬ様に適度には参加しつつ、自分を除くロイヤルスイートの客12人を観察した。




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