若松と青峰

WC初戦敗退。重く苦く辛い言葉が胸の内側を踊る。

あれは、俺のせいだ。俺等のせいだ。決して、青峰のせいじゃあない。現に、青峰は最後まで最強であった。誠凛のエースに勝ってみせた。最後のボールをはたきおとしてみせた。しかし、俺等の誰一人として其のボールを拾ったものは居なかった。ただ、弾かれたボールが敵の手中に渡り、心臓を突き刺すようなブザーと共にリングに叩き込まれただけだった。

バスケは個人競技では無く集団競技。最強を擁しておいての敗北はつまり、他のメンバーが彼を最強足らしめる事ができなかったという、こと。青峰の輝かしき最強にチームメイトでさえ追い付き、追い縋る事が出来なかったという、事実。くちさがない者は、青峰の傲慢さを差して「当然の結果だ」「所詮そんなものだ」と笑った。今まで彼に敵いもしない処か、挑みもしなかった奴等はここぞとばかりに嘲笑った。だが、若松は違う、と叫んだ。違う、青峰は最後まで最強だった。その呼び名に期待に、圧倒的な迄に応えてくれた。それを拾い溢したのは他でもない、俺だ。けれど青峰は何も言わなかった。ミスをした俺等に怒る事も、文句を言う事も、何もしなかった。唯試合のあと、何時もと同じ様に一人で姿を消した。だから、俺はあの時の青峰が何を思っていたかは知らない。




若松と青峰
「テメェは、何してんだよ」
「っ…」

息がつまった。わかっている。そんな事は。自分ではどうあがいても今吉先輩の様に出来る訳がない。うまく、立ち回れていない。

「テメェは主将だろ。俺がコートに立つ時、味方も敵も含めて誰よりも強く、最強であってやる。だからテメェもそれを信じてりゃあいいんだよ。今吉サンみたいに俺の最強だけを、信じてろ」

それが俺という最強を率いる覚悟だろう。青峰は真っ直ぐな瞳でそう言った。常と変わらず、光の灯らない目ではあったが、彼の瞳は強い。ただただ、強さだけを、湛えていた。最強、その二文字に集約されたものが、何れだけ重たいのかを若松は知らないし、これからも決して知る事は叶わない。けれど、青峰がその名を冠する事に、微塵の疑念を抱いた事はない。いつだって、敗北を喫した時であっても青峰は常に最強であり続けた。コート上の誰よりも高い位置で玉座に座り続けた。最強と云う期待に、応えてくれた。

「ああ、そうだな」

青峰の瞳を真正面から見据えてやれば、彼は何時もの様に口角をあげ、挑発的に微笑んだ。最強を戴く覚悟、今ならば出来た気がする。名実共に、青峰を擁する桐皇の主将になれた、気がした。



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