拝啓、/黄青

嘗て二対だった、透明なグラスはフローリングに落ちて、粉々に砕けた。ぱりん、と嘘みたいに綺麗な音を立てたそれは確かに二人の関係に終わりを告げた。どうして、何て口にしたら負け。虚しい仮定の話はただただ傷口を抉る。

「ごめんな、黄瀬」

男が溢す現実から、逃げるように瞼を閉ざしたけれど。真っ暗なそこに、柔らかな過去が浮かんでは消えて、堪らなく悲しくなった。きつく噛んだ唇。痛みがじん、と広がる。

「ううん、ううん、青峰っち、」

別れを突き付けたのは向こうだというのに、酷く傷ついた顔をする男に、愛している、という事は出来なかった。本当は、みっともなく男の胸にすがって泣きたかった。恨み辛みを言って終いたかった。けれど、男に、これ以上拒絶されたなら。俺はもうきっと。




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