尊い鬱身/黄青

女に好かれるんだな、というのは、明け透けに見えてその実ひどく陰湿な男の中で、最も爆発しやすい地雷の様な言葉だった。そんなにイヤなら、そのお綺麗な顔なんか傷付けてしまえばいいのだし、笑顔を振り撒くことをやめればいいのにと思ったけれど。男が口では「いやだうざいしね」というのに、群れる女に対して何ら決定的な行為をしないのは、結局のところ彼なりの防御なんだという考えに至った。(或いは、無意識の)男は嫌われるのを極端に恐れているような、気がした。他人の意識のどこかに、自分がいないと気がすまないのかもしれない。その証拠にベットに寝そべる男を無視して、床に腰をおろして落ちていた雑誌を捲れば、男が此方を見た気配がした。ぎ、というスプリングの軋む音。男はあくまで無言のままだったが、その絡みつくような視線がひどくうるさい。用があるなら、口でいえ。そう言おうと唇を開きかけた。

「青峰っちは、いいね」

男がベットからフローリングに足をつけ、此方に歩いてくる。ぺたり、ぺたり。立ったままこ俺を見下ろす男に顔をあげれば、まるで泣き出しそうな程に男は顔を歪めていた。

「だって、何をしていたって、アンタは、輝いている」

ぺしゃり、と上から降ってきた何かが頬を流れる。生温かいそれが男の涙だと、漸く気付いた。男はがくりと崩れる様に膝をつきその美しい黄色の瞳からはらはらと涙の粒を溢す。それを掬うように、人差し指をそうっと伸ばせば、そのまま男に手首を掴まれた。
俺の掌を、滑らせるように男は自らの頬にあてて。

「たすけてよ、青峰っち。なぐさめてよ、青峰っち」





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