ギン乱
他の誰も気が付いていないだろうギンの癖を私は知っている。ずっと一緒だった私だけが気付いてる。例えば宴席等で出された料理が、その侭手も触れられず下げられて行く時に見せる不快そうな顔とか。苛々している時は二割増しになる嘘の笑顔とか。機嫌が良い時に軽く机を叩く長い指先とか。戦闘中に鋭くなる瞼の奥の空色とか。或は私に話し掛ける時に一瞬だけ見える本当の笑顔だとか。
「何笑うてん、乱菊」
私だけが知っているギンの癖。私しか知らないギンのこと。
「ねえギン、だいすき」
そう言って彼の細い身体に抱き着いた。僅かに戸惑う様に私の背を抱きしめる腕。その動きも全部知ってる。
(どくせんよく)
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