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食らわば皿まで - 7


*浜津side**


古滝くんって変わってるよね。隣に座って胸を押しつける女子がそう言った。ちらりと盗み見た渦中の人は、机いっぱいに置かれた菓子パンを食べては首を傾げ、また食べては首を傾げている。


「なにしてんの、あれ」

「さぁ? でも古滝くんっていっつもなにか食べてるよ。なのにすごく細いんだよねー。うらやましー」


あははっ、と耳元で笑う女子の言葉に胸元を見る。あぁ、確かに以前より膨らんでるな、胸とか太ももとか横腹とか。
しかし確かにあれだけ食べているのが彼の普通なら、あそこまで細いのは逆に異常だ。消化が早いのか? まぁ、別にどうでもいいのだけど。

そんな話もすっかり頭から消え去ったある日、空き教室で跨ってきた女子に付き合っていたらすっかり遅くなってしまった。しかも途中で彼氏乱入とか無いわー。マジひくわー。
と、そんな不機嫌な俺の視界に山盛りの菓子パンが写る。
あぁ、あいつか。そう思ってよくよく見たのは偶然だったが、やはり異常なまでの量を黙って咀嚼する彼の姿は普通に気持ちが悪かった。


「なにしてんの、帰んねーの?」

「ふ?」


ちょっと不機嫌なので憂さ晴らしがしたかったのかもしれない。俺は菓子パンを食べ続ける彼に声をかけていた。
彼は突然現れた俺に怪訝な表情を見せることもなくただ一言、「食文化の違いについて学んでいます」と言う。……こいつ、痛いわー。


「食文化、ねぇ……てかそれ、美味いか? パッケージにとんでもねーロゴついてっけど」

「?」


首を傾げる彼。いやいや、だってお前その「メロメロアンパンロコモコ丼風味」ってなに? どこで売ってんの? つーか買うなよ、そして食うなよ。


「美味しくはないです。でもこれも勉強と思えば苦にならないはず……です?」

「なんで疑問形? 謎だなお前」

「?」


またも首を傾げる彼。痛い上に味覚オンチか? いや、でも美味しくないって言ったんだから味覚は無事なのか?


「じゃあお前のオススメどれ?」

「あげないですよ?」

「いや、いらねーけど。ちょっとした確認。で、どれ?」

「? これです」


これ、と言って持ち上げられたのはクリームコロッケメロンパン。コイツガチで味覚オンチだわ。




 


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