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食らわば皿まで - 6



このトーンで静かに笑う友人には気をつけねばならない。なにせこいつは知る人ぞ知る凶悪魔人なのである。……うわ、無いわー。ごほん、つまり怒っている友人は怖い、ということである。


「んーん、帰るよ浜津。俺、早く食べたい」

「分かってるよ。じゃあほら、おいで?」


どれくらい怖いかを思い出すだけでもおぞましいが、以前、なぜかキレた友人はキャリーバックいっぱいに詰め込んだ俺の非常食を俺の目の前で燃やした。そしてその炎で焼き芋を作って俺にあーんしてくれた。あれ? 後半いい話じゃね?
とにかくキレた友人には逆らわないのが吉。

おいで。と言って片手を伸ばす友人の方へ歩み寄る。しかし美男に捕まれた腕が限界まで伸びてもそれ以上進むことはできず、俺はひどく間抜けな姿である。


「こーたーき」


そんな間抜けな俺を動画で撮る余裕があるなら助けてください友人よ。
俺の祈りが届いたのか、ニコニコ笑う友人はこちらに近づき、バリッと俺を引きはがした。そんなマジックテープじゃないんだから……。


「古滝に触んなカス、一瞬でも彼氏になれたと勘違いしたまま死んで詫びろ」


マジックテープのようなぞんざいな扱いに悲しみ一杯でキャリーバックを手繰る俺に、ボソッとなにかを呟いた友人がヒョイッとキャリーバックを奪った。返せコラ馬鹿返してください。


「さ、帰るぞ古滝ー」

「浜津、浜津、それは俺の非常食だ。もう燃やすのは嫌です止めて! でも焼き芋は美味しかった!」

「はいはい。またアーンしてやるよ」


「古滝……」後ろで呟く美男の声が聞こえたような気がしないでもないが、俺は人質、人質? いや質物を返して欲しくて振り向くことなく友人を追ったのである。


翌日、早弁も昼食もおやつも食べ終えた俺がいつものようにお昼を迎えると、昨日の美男くんが俺と友人の席に集って勝手に弁当を広げていた。
友人は「なにこいつウゼー」みたいな顔で美男くんを睨んでいたが、美男くんがくれた玉子焼きはとんでもなく美味しかったので俺は満足である。

さて、今日はどこの店のメニューに挑戦しようか。




―――――
浮気溺愛vs執着溺愛×大食いガリ平凡

古滝くんは微妙な味覚オンチな設定です。美味しいの範囲が異様に広いのです。
微妙な口調は以前、敬語に慣れていたのを友人こと浜津が「友達に敬語っておかしくね?」と言ってキャリーバック(非常食)を燃やしたので、恐怖と慣れで交じり合った変な口調です。




 


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