結局ミサキとの罰ゲームは朝の五時まで続き、朝帰りを果たした俺は両親にそれはもう叱られた。
まぁね、そりゃ帰ってきた息子の制服から煙草やら酒やら香水やらの匂いがしたら怒るでしょうよ、そりゃ怒るでしょうとも。
けれどそれも昨日限り、どうせミサキたちはまた今日も違うゲームで誰か他の被害者を作って遊ぶのだから、俺はもう用済みだ。
恐らく、ミサキを取り巻く彼らにとって、俺含め弱者のことなど避妊具の一種かなにかと思っているに違いない。
一度使ったら用済み。みたいな。
「おはよ基(もとい)、昨日はお疲れさん」
「おう、おかげで重役出勤だよ全くコンチクショーめ」
「まぁまぁ、ノート取っといたけど見る? 一教科二百円」
「金取るの!? なにこのド外道!」
あっはっはっ。悪びれた様子もなく笑う友人に息をつき、当然ながらタダで見せて貰ったノートを書き写す一日を終えても、その日ミサキが学校に来ることはなかった。
翌日、色んな系統の女子に囲まれながら現れたミサキは、やはりいつも通りつまらなさそうな瞳で俺たち弱者という下界を見下ろす。
しかしながらそんな王様とのお戯れは過ぎた話。ミサキが現れたことで静まり返った教室からぽつりぽつりと音が戻る頃には、俺は友人とゲームの話に花を咲かせていた。
――ガチンッ。
「へ?」
と、いうのに。そんな俺の首に冷たい感触。目の前の友人がこれでもかと開き切った瞳で見上げる相手をゆっくり、ゆっくりと振り返る。
そこには鎖を持って微笑むミサキの、いや王様の姿。ゾッとしない笑みに体の芯が冷え渡る。そっと自分の首元に触れると、それはひどく冷たい金属だった。
「今日の罰ゲーム。付き合えよ」
「……え、と……」
一体なんの罰ゲームかと問いただす前に、ミサキの後ろにいた取り巻きの一人がくすくすと笑いながら「今日の犬はお前でーす」などと言っている。なにその不穏な響き。
「だ、そうだ。ほら、お手」
「……」
いやいやいや、激しく突っ込みたいのだが。
そうは思っていても逆らうことなどできやしない。そう、だって彼は王様。この小さな町の綺麗な王様。すべてが彼の為にある。
すっと伸ばした手を、だがしかし俺は乗せることなく逆に握りしめる。
「躾のなってねぇ犬だな」
「そりゃどーも」
だがしかし、所詮はこの町の王様だ。彼の権力が影響するのはこの町だけ。
俺は、あと五日もすれば親の転勤でこの町を出る。
逃亡者に、この権力を恐れる必要はもう、ない。
―――――
地主の息子×転校で余裕ぶってる平凡
になるんでしょうか? 謎です笑
なにを書きたかったのかも謎です笑
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