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ある王様の話 - 3



それは日常風景の一種だった。ミサキを中心としたクラスでも派手な男女のグループは、今日も今日とて王様のご機嫌取り。
少しでもミサキの気を引こうとあの手この手で場を盛り上げる。いじめや下らないゲームやら、それでミサキが楽しんでいるかどうかは別として、人を人とは思えないような悪趣味な遊戯。
ただ、いつもと違ったのは、今回の罰ゲームを受ける敗者がミサキだった、ということである。

そしてその罰ゲームの内容が、あみだくじで決めた人間と一日中、手錠で繋いで過ごす。というものだった。


「ミサキほら、早くそれ外しなよ。それじゃ遊べないよ?」


なんだか饐えた臭いの(やはりここも暗い)ダーツバーにやって来た面々は、赤い長椅子に腰掛け煙草を吸うミサキの手錠を見て笑う。
こんな町にも存在していることを今知ったダーツバーには、他にも数人客がいたが、ミサキの登場により驚きと喜びを見せていた。そんな周りの観察をしながら、俺は早く帰りたいなぁと色とりどりの酒瓶を眺める。

そういえば、昼からなにも食ってなくね? 俺。放課後くじで決められて、それからずっとミサキとこうじゃん?
今日は帰ってゲームのレベル上げしたかったのになぁ、つか腹減った。

意外と柔軟性のあるメンタルに自分で感心しつつ、テーブルの上に乗るグラスに入ったナッツを見る。
誰も食べないなら俺が食べてもいいですか、それ。

などと思う俺を余所に、王様の取り巻きたちはいつのまにやらゲームをはじめていた。
ちらりと横に座るミサキを見る。一緒に遊ばなくてもいいのだろうか?


「なに」

「え?」

「こっち見てただろ」

「……いや、ミサキ、さんはいいのかなぁと……」


さすがに呼び捨てするのは恐れ多くてさん付けすれば、呆然と取り巻き達を見ていたミサキの視線がこちらに向く。




 


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