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ある王様の話 - 2



「ミサキ、どうする? 次はどこ行く?」

「はいはい、ボーリング行きたーい」

「はぁ? そんな体力ないんですけどぉ。女のか弱さ舐めんな」


長方形の密室――カラオケボックスをあとにした面々は、制服姿だというのに煙草を咥えて暇そうに目を細めるミサキの周りに集まる。
いくらミサキがこの町で大きな顔ができるからと言って、さすがに外で煙草はダメだろう。そう思った俺がすかさず煙草を奪い取り、代わりにべっ甲飴を唇に押しつけると、さすがに驚いたのかミサキが目を開く。
辺りが静まり返り、つい「やっちまった……」なんて絶望に打ちひしがれるが、ミサキは抵抗せずに飴を受け入れた。
そんな俺のうしろで先ほどの彼女が舌打ちをしてわざとらしく肩をぶつけてくる。瞬間、よろめいて後ろに倒れるが、手首に繋がるそれがガチッと音を立てて俺を止めた。


「ねぇミサキ、そろそろ罰ゲームは止めようよぉ。さっきだってせっかく楽しんでたのに、すっごい邪魔だったじゃぁん……ねぇ?」

「言えてるー、一人で床見ながら顔真っ赤にしてさ。あ、もしかして途中でどっか行こうとしてたのってアレ? トイレで?」

「ぷっ、ちょっと止めなよぉ」


ミサキの腕に自分の胸を押し付けながら彼女が言うと、周りの面々も口を揃えて卑俗な言葉を口にする。
残念ながら、俺の息子はまったく反応を示さなかった。むしろ吐き気しかこみ上げなかった。とは言わずに流れに身を任せる。このままミサキが周りに同意して、この幼稚な罰ゲームが終わることをただ祈る。


「じゃあ、お前らが消えろよ」


しかし予想に反し、口内にある飴をカランッと鳴らしながら、ミサキは笑う。
再び静まり返った周りの面々だが、取り繕うように笑いながら、もーミサキは冗談が上手いなぁ! なんて目的地もないまま歩こうとミサキを引っ張る。

それに連動して、俺の右手首にはめられた手錠が音を立て、ミサキの動く方向へと導かれてしまうのだった。




 


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