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「聞く限りじゃ、確かに向こうは最低だよ。けどな、謝罪を拒絶すんのは雄樹、お前はアイツらと同じレベルだって言ってるようなもんじゃないのか? 仁さんが用意してくれたこの場を、お前が潰すのか?」

「……や、トラちゃ……や、だ……」

「バカ。だったら俺にすがってないで、やることやれ」

「……」


震えて伸びてくる雄樹の手を言葉で拒絶すれば、やつは彷徨った視線を不良たちに向ける。
ぱくぱくと空気しか出てこない口を必死に動かしていたが、黙っていた仁さんが雄樹の背中を撫でてやった瞬間、雄樹の口から音が出た。


「……ごめ……なさ、い」


微かに上ずった、蚊の鳴くような声。
それでも不良たちは目をそらさず、その顔に複雑な表情を浮かべながらまた、謝罪の言葉を口にした。

それを聞いて俺は立ち上がる。
関節からも痛みが走る限界の近い体にムチを打って、不良の前で足を止めた。


「不良だがブラックマリアだか知らねぇけど、偉そうに人様の恋愛に口出してんじゃねぇよ。ホモ? キモイ? 同性同士でなにが悪いってんだ。価値観押し付けて、俺の大切な二人を傷つけんな」

「……」


言い捨てて、今度は驚いている隆二さんと煙草を吸う兄の前へ向かう。
紫煙がふたたび、俺と兄のあいだで浮遊する。


「俺は隆二さんや兄貴がそんな人間じゃないって思うから、正直責めるのは気乗りしないけど、でももし見て見ぬ振りだったってんなら、いくら二人でも許さないから」

「……」

「俺の大切なダチ傷つけんのは絶対に、許さねぇ」


兄の目を真っ直ぐに見つめ、言い放つ。
俺の瞳には兄が、兄の瞳には俺が、互いを見つめる姿が映っていた。

咥えていた煙草を離した兄が、おもむろに口を開く。


「んじゃ聞くが、俺と隆二が黙っていたのはなんでだと思う?」


少しも動かない表情筋。つい先ほどまで自分のチームのことでは動いていたそれが、今はてこでも動かない。




 


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