「それじゃあ隆二、てめぇが抜ける必要はねぇな。ブラックマリアはてめぇがいねぇと成り立たねぇ」
「――なっ!?」
隆二さん、そして不良たちがその言葉に目を見開く。
しかし兄は口元の笑みを消して、言ったのだ。
「今のやり取りで分かってんだろうが。自分を陥れたクズのために体張った隆二の一体どこが、副総長の資格がねぇって言うんだ」
それまでの異様な空気の質が明らかに変わった。
背中にのしかかるような、それでいて心の奥を直にわし掴む。反論する気など起きない、のではなく――反論そのものが存在しない。
否応なしにでも、その事実を突きつけられる。
「……玲央……」
「んだよアホ面しやがって。だいたい隆二、てめぇも悪いんだろうが」
「……あぁ、すまん」
「チッ」
兄の言葉に、一体どれだけ救われたのだろう。
隆二さんは微笑みそうな頬の筋肉を必死に制御しながら、それでも目だけは感情をあらわにして、兄に頭を下げる。
それを見ていた不良たちも罰が悪そうな顔をして、床に拳を打ち付けた。
それからの光景はまさにテレビドラマのようだった。
不良たちは隆二さんに謝り、兄は隆二さん、不良たちにそれぞれ一発制裁を下し、幕を下ろしたのである。
「さて、と。仁、どう落とし前つけりゃあ気が済む?」
「……ガキが、偉そうな口ききやがって」
兄たちの問題が解決した直後、今度は店内をめちゃくちゃにした不良たちを代表して兄が仁さんに投げかけた。
仁さんは困ったような顔をして、ソファーから腰を上げる。
「謝れ。それが筋ってもんだろうが」
凛とした声が店内を制し、不良たちをも制す。
俺は呆然とその背中を眺めながら、ここにいる彼らに思いを馳せた。
なんて、なんて血の通った人たちなのだろう……。
「……トラ、ちゃん」
「え?」
そんなことを思っていれば、黙っていた雄樹が口を開いた。
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