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「なるほどなぁ……で、隆二、どうなんだよ?」

「……」


そんな訴えを聞いた兄は、それはそれはわざとらしい声音で獲物を変えた。
仁さんのうしろだろう位置に立つ彼の足が、止まったまま動くことはない。


「……確かに俺は、自分の意志でここに来てる。でも俺らは言われたよな、俺と雄樹を認められねぇなら二度と来るなって、仁さんに言われたよな?」

「あぁ、そうだな」

「俺は、認めてる。……ここを追い出されたそのときから、俺は認めていた。だからここにいる」

「……へぇ」


正直、なんの話かはさっぱり分からない。
だけどその隠れたものが兄率いるブラックマリアと、雄樹と仁さんたちとのあいだにあるしがらみであることだけは理解した。

急に白くなった視界を止めたくはなくて、必死に意識の紐を掴む。


「おい、そこのクソども」


唐突に、兄は隆二さんとの会話を止め、奥のほうで震える客たちに声を発する。
みながみな怯えた声を口から漏らしたが、そんなものに構うことなく兄は言った。


「さっさと帰るか上に避難するか、好きにしろ。んで、消えろ」


このときばかりは慈悲深いようにも聞こえる言葉に、客たちは恐る恐る動きだし、我先にとエレベーターへ向かっていく。
一回だけでは全員を運べなかったエレベーター音がなんどかして、客が消えた店内でおもむろにライターの火をつける音が響く。


「おい玲央……とりあえず、手当てさせろ」

「あ? 手当て? こんな怪我じゃ死なねぇよ」

「ちげぇ……トラのこと、だ」

「あぁ?」


なんとか意識を手放さずにいれば、ふいに仁さんが手当てをすると言い出した。
その対象が俺であると知ったそのとき、どうやら兄はここに俺がいることを知ったらしい。




 


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