×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

5 - 6



とりあえず雄樹に知られてはまずいと察して、俺は「ぶつけた」なんて嘘をついておく。
仁さんも同じ考えだったのだろうか、驚く素振りもなく俺に合わせてくれた。

それから夕方五時まで喫茶店として開放されていたカシストは、一時間の休憩を得たあと一転して、不良どもを受け入れるバーの顔になる。
昼と夜とでこうも客層が違うものなのか、そんなことを思いながら俺は本分であろうお粥を作りはじめた。


「あれ、小虎?」


それからほどなくして、私服姿の隆二さんが現れた。
学ラン姿でも十分色気を放っていたのに、私服になるとその倍以上ある。
黒のテーラードジャケットに中はVネックの白いロゴシャツ、恐らくビンテージものだろうジーンズに黒の革ブーツ。
首から下がるゴールドアクセも一役買って、彼の雰囲気は尋常じゃないほど色気が漂っていた。


「しかも雄樹までいるし。今日休みじゃなかったのか?」

「あ、いやまぁ……体がバイトしてぇと訴えていまして」

「はは、なんだそれ」


笑いながら俺の前へと腰を下ろす隆二さんは、慣れた手つきで煙草を吸いはじめる。俺はカウンター内に山積みされた灰皿の一つを彼の前に置いた。
律儀なことに礼を言ってくれた彼に微笑み、タイマーの鳴った鍋をコンロから退かす。


「また新メニュー?」

「え?」

「それ」


そんな俺を見ていた隆二さんが突然言うものだから、一瞬分からず困惑してしまった。が、それ、と言って彼の筋張った指がさしたまな板の上を見て、頷く。


「隆二もなんかいい案ねぇのかよ。たまにはここに貢献しろ」

「貢献って……それを俺に言いますか」


ははは、笑いながら仁さんから出されたアレキサンダーを受け取り、彼が困ったように目尻を下げた。


「はぁ? てめぇはもう十分うちの客だろうが」

「……そ、ですかね」

「そうだろ」

「あははっ、はい」


あ、まただ。
また俺の知らないなにかがある。
嫌でも感じてしまう疎外感に目を伏せて、俺は芋粥に使うさつまいもに包丁をいれた。

そのとき、だった。




 


しおりを挟む / 戻る