「意味が分からない」
「それこっちのセリフだしー! なんなのなんなのー! もー! マジレアもん見た!」
そのあと、ゴールにつくなり俺を地面へ投げ捨てた兄は帰ってしまい、なんとも言えない空気の中で続行された借り物で、なぜか雄樹は仁さんを連れて帰ってきた。そのお題を見せてもらえば、恋人。
どうしよう、意味が分からない。
「え、マジで、本当になんで?」
「わ、なに、どうしたトラちゃん」
なぁ、待ってくれ。待ってくれよマジで。
恋人ってお題で仁さん連れて、あげくの果てに一位?
なに、そんなんでいいの?
じゃあ例えば俺が隆二さんを兄だとして連れていけば、やっぱりOK出てたの?
そんな勇気があるかどうかの前に、そんな中途半端な審査で一位をとって帰ってきた雄樹に、俺はつい先ほどまで掻いていた冷や汗が無駄な気がして信じられないほど動揺していた。
じゃあ俺の努力はなんだったんだって。
「いや、トラちゃんの場合は駄目でしょ。実兄が玲央さんだってみんなにバレてんだし」
「……あ、そっか」
そういえばそうだった。
あー……なんだ、変に動揺して損した。
あれ? てかなんで雄樹、俺の心の声が……口に出てたのか?
「え、てーかそっち? 仁さんと恋人のほうが驚きじゃなくて?」
「は? なに、本当なの?」
「……本当……かもしれない、よ?」
……なに、その「よ?」って。キモイ。
げんなりした顔を雄樹に向ければ、なぜか固まってしまうアホ。
うしろで笑っていた仁さんが雄樹の頭に手をのせて、俺のほうに意味ありげな笑みを浮かべて言った。
「こいつ、俺のモンだから」
わぁお。マジだ。
目を泳がせる雄樹と、そいつの頭をわしゃわしゃと撫でる仁さん。
そうか。だから雄樹は仁さんに懐いてて、仁さんは雄樹のアホにも付き合っていたんだ。
納得してしまえば、すんなり受け入れられた。
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