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「仁さんがオムライスならー、俺はやっぱりこの愛を」

「いらねぇ」

「秒速!?」


盗み聞き、というわけではないが聞いていた雄樹がアホなことを言ってきたので丁重にお断りした。
そしたら大袈裟に肩を落とすので、そこめがけて肩パンしてやると、なぜかニヤリと笑われた。

意味、分からん。


「1-Dの生徒いますかー?」

「俺らじゃね?」

「はいはーい! ここにいまーす!」


ほどなくして人の多いスタート地点にやってくれば、係員のような教師に探されているようだった。
雄樹が元気よく返事をしてくれたおかげで、俺たちはなんの問題もなくスタート地点につける。
うしろのほうで待っていたクラスメートからは「おせぇ」と言われた。すまん。


「なぁ雄樹、俺さぁずっと思ってたんだけど」

「んー?」

「この学校って大体一クラス四十人じゃん? それ五万わけたらさ、一人たったの千二百五十円じゃね?」

「ばっかだなー」


競技がはじまるわずかな待ち時間で、俺はひたすら疑問に思っていたことを雄樹に愚痴ってみる。
するとやつは腕組みをしながらそう言ってきたので、軽く肩パンした。


「愛のムチは嬉しいけどさー、考えてもみなよトラちゃん。ここは不良校だよ?」

「あ? そうだな」

「つまりさー、拳と拳の……ね?」


あー……そういう、こと、ね。

なぜ雄樹が「常識でしょ」みたいな態度で言ってくるのか謎ではあるが、とりあえず納得しておく。
なぜならここは不良校だから。


「でもトラちゃんが欲しいのは賞金じゃないっしょ? 俺からのー、愛!」

「ではないな」

「ノリが悪い!」

「ありがとう」


あぁ、なんでこいつはいつもアホなんだろう。
脳細胞自体がアホなんだろうか? 親の顔を一度拝んでみたいものだ。




 


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