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「おいそこのサボリども」

「あー、仁さんだー」


雄樹の発言にげんなりすること数十分後、黒の七分丈シャツにダメージジーンズ、ブーツというラフな格好をした仁さんが、本当にカメラを持って現れた。
差し入れと称された飲み物をそれぞれ貰い、日陰満喫チームができあがる。


「しっかし、見事に不良ばっかだな、ここは」

「仁さんの母校じゃーん」

「俺がいたときはまだ普通だったぞ? まぁ、不良は多かったけどな」


カメラの準備をする仁さんの横で、貰った飲み物を片手に雄樹が談話している。
俺はそんな二人を眺めながら、呆然と向こう側に見える校庭を観察していた。

あぁ、今日も今日とて平和なものだ。


「よし、準備完了。で? お前らの出番は?」

「まだ先ですー。って、ちょ、トラちゃーん? 魂抜けてる抜けてるー」


気の抜けた顔でもしていたのか、雄樹が笑いながら俺の頬に飲み物を当ててきた。
冷たい感覚に瞬きを繰り返し、デコピンを食らわせる。
いてー! とか雄樹が大袈裟なリアクションをとっていたが、そのうしろでは微笑ましく俺たちを眺める仁さんがいた。

なんつーか、こういうの、憧れている。
友達と談話してて、それを見守ってくれる保護者が側にいて、そんな感じの普通の風景。


「雄樹、俺、夢が一つ叶った」

「え? なに、急にしみじみして。おっさんくせーよトラちゃん」

「うるせーアホが。今の俺はなぁ、幸せなんじゃー」

「どうしよー! 仁さんどうしよー! トラちゃんが変だー!?」


俺の反応がよほどウケたのか、やつはニヤついた顔のまま仁さんを呼ぶ。
だからそのまま視線を仁さんに向けると、なぜか彼は俺の頭を撫でてきた。

ポン、ポン。

柔らかな笑みを浮かべて、いつもは見せないような何かを晒しながら、彼はなんども俺の頭を撫でていた。




 


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