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「大体てめぇが一丁前に有名なくせして、ここでバイトしてるからだろうが。くそっ、あんときマジで騙された」

「ひどいなぁ、俺あのときボロボロだったじゃないですか」

「自業自得だボケ」


俺を小突いたときよりも強く、白に近いグリーンの髪色をした凰哉を叩いた仁さんは、一般人が怯える表情のままシェーカーを手に取り仕事に戻る。


「つーかトラ、お前が拾って来たんだから最後まで世話しろよ?」

「そんな犬猫じゃないんですから……それに凰哉は頑張ってますよ?」

「その頑張る姿に釣られて、不純なクソガキ共が空欄だらけの履歴書送り付けてくんだろうが」


と、ぼやく仁さんの声にカウンター前の少女たちの肩がビクリと震える。何人か心当たりがあるのだろうか。気づかなかったことにしよう。

ブラックマリア解散から十年、かつて街を闊歩していた不良たちは影を潜め、時代の流れか今の非行少年少女たちのそれはチャラ男かオシャレ女子だ。以前までたまに見かけていた喧嘩もあまり見なくなり、逆に陰湿な現場を目にすることが増えた。それでも犯罪率が極めて低いのはあの司さんがデスリカで目を光らせ、常にサボり気味の新山さんが警察学校の教官に就き、新人警官たちを良いように扱っているからだろう。

それとは別にまだ理由がある。それがこのバイトの凰哉だった。
どこのアニメキャラだと疑いたくなる髪色をした凰哉だが、彼は裏表が非常に激しく、裏人格である凶暴な姿はバケモノと呼ばれているらしい。ひどいネーミングセンスだ。
そんな凰哉にイジメやカツアゲを邪魔された現代の不良たちは執拗に報復を狙うが、そのたび容赦なくボコボコにしていた凰哉は、ある日カシスト近くの路地裏で膝を抱えていた。買い出し帰りの俺が声をかけると、今にも倒れそうな顔色の凰哉は一言「腹が減った」と言うのでお粥を与えてやれば、なぜかその日から懐かれ、ついにはバイトの座を手に入れてしまったのである。

いわく、喧嘩(という名の一方的暴力)で体力を消耗し、食べるはずだった晩ご飯がその喧嘩の最中踏みつぶされ、腹が減っていたらしい。




 


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