人間の急所を攻撃されたせいか、身を震わせた獣が俺の腰を強く掴んだ。それに気を良くして噛みついたそこに舌を這わせると、玲央の片手がするりと俺の胸を撫で上げる。その手を軽く叩き落とし、にっこりと笑む。
「だめ」
「おまえ……、」
なにか言いかけた唇を一舐めし、そのまま頬に唇を落とす。胸板に乗せていた手で逞しい体を撫ではじめれば、獣がごくりと息を呑んだ。
――可愛い。
と、思ってしまった。
いつも余裕綽々で、経験豊富で横暴な玲央が、俺を前にしてそのすべてを失っている。
ただ本能が欲するまま、俺に触れたいと願っている。
あぁ、なんだ。俺と一緒なのだ。
俺はゆるりと頷いて、玲央の胸に手をつき体を起こす。
「……だめ」
玲央が与えてくれる一言で舞い上がったり、玲央が触れてくれただけで満たされたり、隣に座って手を繋ぐだけでも充分幸せなのに。なのに俺はワガママだから、その先が欲しくなる。
好きなのに、好きだから。だから触れたい。触れられたい。
「俺以外、玲央に触っただなんて……許せそうにないや」
余すところなくそのすべてを、俺だけのものにしたい。
俺の言葉に目を瞠った玲央が早急に身を起こした。けれど俺はそれを受け入れず、肩を強く押しながら強引に唇を奪う。もう何度目か分からない口付けは互いに暴力的で、その優しさが微塵も存在しない動きに満足してしまう。
そんな俺とは違い、今度は押し倒されなかった玲央が、寄りかかる俺の腰を抱きながらゆるりと身を起こした。
「ふっ、あ……れお……っ」
「一丁前に嫉妬しやがって、煽ってんのかお前」
ぐるりと視界が反転する。あっけなく押し倒された俺のモノを強く握り、直接的な快楽にガクガク震える俺など無視した玲央は上下に扱く。簡単に吐精し、息を乱す俺を見下ろす獣の瞳は、ただどうしようもなく美しかった。
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