再び俺を押し倒そうと、腰に手をかけた玲央の髪を両手でわし掴み、俺の全身を舐めしゃぶっていた唇に食らいつく。早急に押しこんだ舌で驚く玲央の歯列をなぞれば、自分の怒張を俺の尻に打ち付けた獣が舌を絡ませた。
「んっ、はぁっ、あまく、ない……っ」
「はっ、甘ぇよ、ふっ、ほら、飲み込め」
甘い。と言う玲央の言葉を期待して味わう口内は煙草の味がした。それに文句を垂れた俺の舌に沿って、玲央が大量の唾液を流し込む。けれど重力には逆らえず中途半端な粘液をすすれば、少しだけ甘い気がして更にむかついた。
経験の差で玲央の舌が優位に立った。無理やり口を離して身を起こすと、その長い距離を唾液の糸が淫らに繋ぐ。
「逃げてんじゃねぇよ」
俺の動きに焦りを感じ取ったのか、自分が組み敷かれているというのに野蛮に嗤う獣は挑発的だ。
この、光景は俺の気持ちをより高める。けれど、どうしてか無性に腹が立つのだ。やはり追いつけないこの男に対して、じゃない。本当は分かっている。ただ、それを認めてしまうのはあまりにも癪で、あまりにも口惜しい。
だってそうだろ。この男の、この黄金の獅子が、こうして熱く本能をさらす姿を、俺以外の誰かが知っている。
それも一人二人じゃない。想像もつかないほどの女が、この男の欲望を暴き、受け入れたのだ。
「……っ」
分かっている。それは所詮過去にすぎず、今、この男は俺を欲していると分かってはいる。
それでもみっともないこの感情が肥大するのは、どうしようもなく好きだから。
玲央を見下ろす俺の瞳が肉欲以外に染まったことに気がついたのか、労わるように腰を撫でる手が、緩やかに俺を引き寄せた。
そんな優しさを無下にして、俺は汗ばんだ獅子の喉仏に牙を立てる。
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