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「玲央を家族として求めたのも、兄として憧れたのも、一人の人間として好きになったのも、それは全部、俺が選んできたことだ」


たった一瞬離れていた、指先の冷たくなった手を握りしめる。膝の上で震えていただけの自分の手も、重なる手の平ごと導いた。


「だからね、ずるいなって、ちょっと思っちゃった。強引に玲央のものにして欲しいなんて、なんだか女々しいことを思っちゃった。玲央が選ばせてくれた気持ちは、うん、分かってるんだけどね」

「……小虎、」


こちらを見上げている玲央に微笑めば、冷たかった指先がじんわりと熱を持つ。もうそれだけで、どうしようもないなぁ。


「ありがとう、玲央。その気持ちが嬉しい。あぁ幸せ者だなぁって、ニヤけちゃうんだ」


そう言って、だらしなく笑んだ俺の表情を目にする玲央の瞳が微かに見開かれる。そんな姿一つで俺をここまで幸せにできるのも、きっと玲央だけだから。


「だから、選ぶよ」


最後の選択肢を与えてくれる玲央の優しさは、俺という人間一人を簡単に救ってしまう。

知ってるんだ。恰好つけではあるけれど、飾らない朝日向玲央の頼もしさを、俺は知っている。
いつも俺を守っていた背中ばかり追いかけていたから、俺の代わりに苦しむことも、傷つくことも、辛く寂しく歪むその表情さえ、背中を向けることで隠しつづけてきた玲央を、俺は知ってしまったから。

――俺は、自分の手に収まる玲央の左手薬指、そこにゆったりと牙を突き立てた。

皮膚を突き破るような甘い感触が歯にあたる。その刺激で口内にある指がびくりと反応した。そんな指を舌で舐めとるように唇をすぼめ、時間をかけてゆっくりと、自分の口から抜き取った。
指と唇を繋ぐ唾液の糸を舌で切りながら、俺は自分の左手薬指を玲央の唇へと押しつける。微かに開いたその隙間へ押しこめるよう指を進めていけば、やがて訪れる芳しい痛み。

あぁ、ようやく玲央の隣に並べたのだ。




 


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