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「お前がどんな答えを出しても、俺は結婚を発表するつもりだ。お前がやっぱり嫌だって言うならそれでもいい。それでも俺は、お前以外いらねぇ……――だから決めろ、小虎」


ふいに頬から外れた手が、俺の左手をそっと導いた。


「この薬指に俺のモンだって証拠を嵌められて落ちるところまで落ちるか、人として真っ当な人生を歩むか、お前が決めろ、小虎」


自分で導いたはずの手を、逃がさないと言わんばかりの強さで捕まえながら、それでも最後の選択肢をあてがう玲央の瞳には俺しか存在を許されない。

あぁ、ねぇその心を、


「……玲央、俺はね、」


その心を、少しでも損ないたくはない。


「俺はね、分かってるよ。玲央がこうして選ばせてくれるのは、昔のことで罪悪感があるからでしょう?
置いていかれたあの日、俺はまだ子供で、誰にも選ばせてもらえなかったよね。離ればなれになった五年も、再会してからも、俺は暴力を受けてたけど、違うんだ、違うんだよ、玲央」


捕まれた左手をそっと外せば、見つめ合う玲央の瞳が揺れ動いた。


「玲央は俺に言ったでしょう? 当たり前をしてこなかったって。その通りなんだ。俺は、あの五年も、再会してからも、いつだって拒むことをしなかった。それは俺が選ばなかっただけで、ちゃんと別の人生もあったと思う。
だから、俺が選ぶことも許されなかったのは一度だけ、置いていかれたあの日だけなんだよ。
それだけは、子供だった俺たちにはどうしようもなかったことだ」


両親が決めた離婚という結末は、たとえその血が分け与えられた子供にも覆すことはできない。大人の都合、だなんて体のいい屁理屈に泣き叫ぶことはできても、反対することはできても、それだけ。
だからと言って、両親を憎む気持ちになれないのは、やっぱり家族という情なのかな。


「でもね、玲央は俺に抵抗する当たり前を選ばせてくれた。
なんの価値もなかった俺の人生に、意味を与えてくれたでしょう?
そのときから、俺はちゃんと選ぶことができたんだよ」


空中を彷徨う玲央の手を、今度は俺がそうっと導く。




 


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