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「小虎」


名前を呼ばれただけで心臓がドクドクと早鐘を打つ。溢れては止まらない雫が、玲央の手を濡らしてしまうのが分かる。


「司と豹牙を見てると、常識なんてくだらねぇって勘違いしそうになるけどな。そうじゃねぇだろ。俺とお前の関係は、やっぱり許されるもんじゃない」

「……うん」

「だから俺はあの日お前を抱かなかった。あのまま流されて簡単に超えていいもんじゃねぇ。それは分かるな?」

「うん、分かるよ」


恋をした。好きになった。触れてみたら、もっと触れたくなった。積み上がる気持ちを理由に、簡単に行動を起こす俺を制御してくれた優しさは、兄としての責任。


「世間一般の恋人とは違う。駄目になったから別れる、なんて簡単な始末じゃ片づかねぇ。それは俺とお前が兄弟だからだ」

「うん」


諭す真実を受け入れる。その当たり前を突きつける慈しみも、きっと兄としての覚悟。だけど、


「それでも俺は、お前が欲しい」

「…………うん、」


頬に添えた手の平でたおやかに撫でながら、手の内で未だ震える俺の手を握りしめ、少しも外れることのない真っ直ぐで定まる熱意。
兄として戒めるその実、堪えることのできない己を駆り立てるもの。
だけどそれは、朝日向玲央というただ一人の男が俺に向けた、嘘偽りのない欲望。


「悪いが、恋人なんてすぐ切れるような肩書をくれてやる気はない。けど俺とお前はもう家族だろ、だから考えた。お前を裏切らないって証明が形になるなら、俺はあの日限りのお前と結婚して、世間を騙す。お前を一生側に置いておくためなら、俺はなんだってする」

「……玲央」


なんて強欲な嘘だ。そんな嘘をついてまで、朝日向玲央は朝日向小虎を欲している。
それだけで、あぁそれだけで十分なのに、掻き集めても足りない言葉じゃもう、好きや愛してる以上の気持ちに名づけることなどできないのに、鼓動する抑えのきかない純粋が、俺をも突き動かす。




 


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