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悪い、起きて開口一番に獣が放つ言葉がそれだった。俺は痺れた足を擦りながら、「最近忙しそうだったから疲れてたんだろ?」と微笑むが、玲央は罰の悪そうな顔をして俺と同じように足を擦ってくる。
雄々しい筋張った手がふくらはぎから太ももへ、ゆったりと上下する様に目を伏せて「大丈夫だから」と言うのが精いっぱい。そんな俺の様子が怒っているように見えたのか、玲央はもう一度「悪い」と呟くと、その手を止めずにつづけた。


「……んっ」


くすぐったさに声を漏らし、なにかを誤魔化す様に痺れた足へ爪を立てた。さすがにこれには玲央も疑念を抱いたようで、俺の顔を覗き込むとそっと息を呑みこんだ。
その音を幻聴だと思い込んで、調理の邪魔にならないように整えた爪をさらに太ももへと深く刺す。そんな俺の手に、玲央は自分の手を重ねて握った。


「傷がつくだろ」

「……ん、でも」

「でも?」

「……なんでも、ない」


なんでもなくなんて無い。なにをしているのだろうか、俺は。抑えてる。抑えてる? 一体なにを抑えているんだ。

『胸の奥が高鳴って、普段ならできることもできなくなる』
『相手の顔を見ただけで心臓が早鐘を打って、触れられるとそこだけ異様に熱を持つ』

ドクリ、と脈打って。なぜかあの日西さんに言われた言葉が脳裏をよぎる。


「小虎」


『相手に名前を呼ばれると、たったそれだけで舞い上がっちまう』


「――……っ!」

「……お前」


重なった玲央の手が指を絡めた瞬間、俺は勢いよく顔を上げた。ぱく、ぱくと口を開閉させても声が出ない。苦しさに目を細めて唇を噛みしめると、玲央と俺の距離が消えた。


「んっ!? ……ふっ、んぅ……!」

「……はっ、」


ぐちゅっ、と粘膜と粘液の交じる音に泣きたくなった。そんな思考さえも許さないと言わんばかりに、口内を犯す舌はその熱を乱暴にむき出してくる。次々と溢れる唾液が深く交ざり合い、まるで呼吸すら奪っていくような攻撃的な行為に堕落して、支配されていくような生々しさに目が眩む。

喰われたい。このまま喰われてしまいたい。

体の内側からふつふつと沸き立つ感情があまりにも歯がゆくて、いつのまにか両手で俺をまさぐる獣の首に腕を回す。




 


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