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ただぼーっと過ごす時間は意外と早く過ぎる。
機嫌の良い獣と一緒に、朝食を取った場所とは別のテラスに置かれたソファーに腰を下ろして、なにを話すでもなく自然の音に身を委ねる。ふと繋がれた手が指を絡める頃、欠伸を漏らした玲央は突然俺の膝に頭を乗せてきた。
そりゃもちろん驚いた。だがすぐ寝息を立てる玲央の様子に並々ならぬ疲れを感じ取り、俺はそっと金の髪を指ですく。
しばらく堪能したあと、のそりと身を起こして掴んだコップはもはや氷も溶けて中身も水っぽい。


「……」


さわさわと葉擦れの音が辺りに響いた。ゆったりと流れる時間の中で、あぁ穏やかだなぁと目を伏せれば、こちらまで眠ってしまいそうだ。


「……玲央」


ぽつりと呟くも反応はない。安心しきった表情で眠る獣は今、どんな夢を見ているのだろう。


「……兄貴」


久しく呼ばなかった名称を口にする。のそりと肩に重みを乗せるそれは多分、最後の倫理観。


「…………」


これほどの宿の予約が一日そこらで取れるわけはない。きっともっとずっと前からこの旅行を計画していたはずなのだ。加えて、俺がその餌を前に赤点を取らないと少しも疑わなかった信頼は、俺の中にも居座っている。

ふっと視線を下に降ろす。
頭ひとつ分ゆうに超えた体格は、同性から見ても逞しさを滲ませ圧倒的なオーラを放つ。少しいい加減な物言いも、なぜか耳に届く頃にはすっかり翻弄されて呑み込まれてしまう。
カリスマと呼ばれる所以のひとつひとつをなぞっていったらキリがなくて、だけどそれが頼りないほど心地よくて。
無防備に寝顔を晒してもらえることを、肌と肌が触れ合うことを、その身体を預けて貰えることを、


「……幸せ」


と、人は言うのかもしれない。




 


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