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「……いや、悪い。そうじゃねぇ、そうじゃねぇんだ」


しかし目を伏せた巴さんは苦笑を浮かべ、ぼとりと落ちた煙草の灰を指で潰す。


「俺は、だから二年もムショに入ってたし、ノエルには会わなかった。合わせる顔もねぇし、それが自分のできる罪滅ぼしだと思った。まぁ……そのせいで大勢に迷惑掛けちまったが、俺はこれで良いと思い込んでたんだよなぁ。
でもよ、あの日、お前が泣いてもいいって言ったとき……はじっ……は、じめてっ、許された気が、した」


深く息を吐く。その息さえ震える彼の逞しい体は、今は誰よりも弱々しく、美しい。
あぁ、そうだったのか。俺は同じように息を漏らし、巴さん、と彼の名を呼んだ。


「ありがとうございます」

「……あ?」

「俺、今回巻き込まれて、本当に良かった」

「……はぁ?」


俺の感謝の言葉に巴さんが顔を上げた。そのあどけない表情に笑みをこぼすと、彼はごくりと息を呑む。


「俺、ずっと分からなかったんです。いえ、本当は認めたくなかっただけなんです。多分、それを認めたら俺は普通じゃなくなるって、怖かった。でもよくよく考えたら、俺って別に普通じゃなかったんですよね。巴さんも、豹牙先輩も司さんも、新山さんも仙堂さんも、別に普通じゃなかったんです。
だってそうでしょ? みんなそれぞれ理由があって行動してるんです。それはきっと、有り触れたことでもなんでもない。普通なんかじゃ、ないんです」

「……」

「それをね、俺は今回やっと素直に認めることができたんです。
想像もできない皆さんの事情に巻き込まれても、それでも俺が挫けずにいられた理由は普通なんかじゃないって、今はちゃんと認めることができる」


だから巴さん、と彼の手を握り、一度頷いた。


「ありがとうございました」


それから軽く頭を下げ、再び顔を上げたそこには涙を堪えた巴さんがいたのだった。




 


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