「なんか青春してんなぁ、お前ら」
「ちょっと、えっちゃん止めたげてよぉ!?」
ガラリ。
俺と志狼を囲う柔らかな空気が一瞬で壊される。
その下手人である豹牙先輩はニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべ、その後ろで制服の裾を引っ張る雄樹はアホ面だ。
「いやー、お粥食いに来たけど良いもん見れたわ」
「ごめんねシロー! 今すぐぶん殴って黙らせるから続けて!」
と、まるで漫才のような行為を繰り広げられ、さすがに俺と志狼は苦笑する。
その笑みを見た雄樹はのそりと近づき、俺と志狼の間に座った。
「……えー、では今から追試なし祝いではなく、シローくん失恋パーティーを開催します」
「おい雄樹、俺よりひでぇぞその茶化し方」
と、まったくもって豹牙先輩の言うとおりである。
それでもこれが雄樹らしい気の使い方だと俺と志狼はもう一度、顔を合わせて笑った。
それから結局いつものようにダベっていただけで放課後になり、テスト返却日ということで休みを貰っていた俺たちはさっさと学校をあとにした。
いつもならバイトが休みでも結局カシストに行って仕事をするのだが、今日は雄樹が「俺はシローくんを癒すのでトラちゃんは大人しく帰ってください」と言ってきたので、なぜか豹牙先輩と帰ることに。とはいえ、実際帰り道は反対である。
「じゃあ行くか」
「いえ、俺は歩いて帰りますよ。道反対だし、いくらバイクでも面倒でしょう?」
「ばーか、今からデートすんだよ」
「で、デート?」
ほら、早く乗れ。そう急く豹牙先輩からヘルメットを手渡され、有無を言わせない雰囲気に俺はしぶしぶ頷くのであった。
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