「やっぱり俺、小虎が好きだなぁ」
「あはは、うん、俺も志狼が好き」
むず痒いけれど嬉しい言葉に同意すると、志狼は違うよ、と呟く。
「俺の好きは、小虎の好きとは違うよ」
「志狼?」
「俺は小虎が好きだ。この意味、分かる?」
微笑んだまま志狼が問う。
食べる手が止まったまま俺は口を閉じて固まった。
意味は、分かる。今なら、今だから分かる。
無意識にそっと口を開く俺に、こちらを見つめる柔らかで優しい瞳が揺らぐ。
「でも答えを聞きたいわけじゃないんだ。答えなら、もう分かってるから」
「……」
「情けないとこばっかで、格好いいとこなんて見せられなかったけど、でも小虎を好きになれて良かった。
小虎は俺を憧れって言ってくれるけど、俺の憧れは小虎だよ。小虎を好きになった自分が、だから俺は誇りなんだ」
真っ直ぐと、嘘偽りのない純粋な思い。
出会ったあの日からずっと憧れていた友人からの、誠実な告白。
答えが分かっていると言いながら、それでも自分の気持ちを誇りだと言ってくれる頼もしさ。
あぁ、だから俺はこの人に憧れている。
「ありがとう……志狼」
「……うん」
「ありがとう」
「うん、」
きっと、俺が困ったときや悩んだとき、雄樹と志狼は駆けつけてくれるだろう。同じように二人が辛いときは、必ず俺が駆けつける。
そこに芽生えている感情は、家族や恋人に対するものとは違うけれど、とても似ていて時にはそれ以上に堅い。
俺たちがいつか大人になっても、この絆だけは絶対に切れないと断言できる。
「俺こそありがとう、小虎」
「おう、どーいたしまして」
互いに強く握った拳を軽く合わせて、俺と志狼は笑った。
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