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酒盛りは結局明け方までつづき、後片付けを終えて帰る頃にはもう朝陽が顔を覗かせていた。その眩しさに目を擦りながら、タクシーに乗り込む皆を見送る。なぜか志狼が新山さんと仙堂さんに捕まり、未成年だから大人が必ず送ると言ってきかない二人に志狼はここ一番疲れた顔を見せていた。


「今日は遅くまでありがとうございました」

「おー、いいっていいって。楽しかったしな。お前らも気を付けて帰れよ?」

「はい、じゃあ失礼します」


帰りのタクシーの中ですっかり酔いつぶれて眠ってしまった雄樹の頭を撫でてから、仁さんに頭を下げる。きっと今回のことを詳しく知らないだろう仁さんだが、それでもこうして皆が笑い合える場を提供してくれる彼の心の広さに労いの意味を込め、去りゆく姿にもう一度頭を下げた。

明け方まで起きていた体に朝の空気は堪える。隣を歩く玲央もそれは同じようだった。


「ごめん、付き合わせちゃって」

「気にすんな」


帰りは歩きたいと言い出した俺の言葉に嫌な顔一つせず、先にタクシーで帰ることもせず、俺の歩幅に合わせて歩く玲央が頭を撫でた。
ぐしゃり、と掻き乱された髪に通る指の感触が柔らかい。気持ち良くて、気を抜けば眠ってしまいそうだ。


「……なんか、色々あり過ぎて、ちょっと頭冷やしたかったのかも」

「あぁ」

「なんか、さ……うん、なんだろ……ははっ、ごめん。上手く言えないや」


苦笑を浮かべると、頭を撫でていたその手でそっと、玲央が俺の手を握る。明け方で人もいない住宅街で、知らない人が俺たちの姿を見たらどんな勘違いをするのだろうか。
そんなことを思いながら、胸が張り裂けそうな思いで玲央の手を握り返す。すると倍の力で握られて、なんだか泣きたくなった。

けれど、ふと玲央の歩みが止まり、それまで込み上げてきた気持ちがどこかへ下っていく。


「……巴、さん」

「よぉ、お疲れさん」




 


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